目次


バーナンキのFRB

知られざる米中央銀行の実態とこれからの金融政策


[目次] [著者紹介]


表紙




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はじめに

第1章 バーナンキの金融政策
   ◎インフレ・ターゲットの行方を読む

1 バーナンキの政策を読む七つの視点

  (1)プラグマティックに変容
  (2)グリーンスパンの手法を継承
  (3)インフレ・ターゲット採用はコンセンサス形成後
  (4)透明性向上に向けた情報発信
  (5)グリーンスパンと異なる市場に対する哲学
  (6)危機管理の手腕は未知数
  (7)日銀の金融政策に関する言及

2 FRB議長就任までの軌跡

  ラビの助言がなければFRB議長は誕生せず
  「私は自分を大恐慌マニアだと思っている」
  「びっくりした。バーナンキが共和党支持者だったとは」
  FRB理事からホワイトハウスへ
  ブッシュ大統領に次期FRB議長に任命される
  グリーンスパン前議長は“右腕”コーン理事を推薦?
  第一四代FRB議長就任を正式に承認

3 インフレ・ターゲットへの反対が相次いだ上院公聴会

  FRB議長に敬意を払う上院議員
  「ホワイトハウスから独立できるのか?」
  バーナンキの証言テキスト
  上院議員が迫る「二つの使命」
  衝突回避を最優先した答弁
  釘を刺された財政政策への発言
  反対派議員の懐柔が当面の課題

4 予想されるバーナンキのインフレ・ターゲット

  コンセンサス形成に時間をかける
  インフレ・ターゲットを主張する理由
  バーナンキの“望ましいインフレ率”はプラス一〜二%
  物価統計は何が適切か?
  エネルギー関連を除くべきか否か?
  達成期限を設けるのか?
  インフレ・ターゲットのまとめ
  参考:短期金利予測とインフレ・ターゲットの関係

5 FOMCのさらなる透明性向上を図るバーナンキ

  声明文の表現を徐々に明瞭化?
  「フェッドスピーク」で示された四つのアイディア
  インフレ・ターゲット導入“地均し”になる選択肢
  透明性と秘密保持の妥当なバランス

6 講演録から読み取るポスト・グリーンスパン政策

  中立的なフェデラルファンド金利
  テーラー・ルールよりも有利な「予測に基づく政策」
  過剰貯蓄と長期金利の“謎”について
  大恐慌から得られる教訓
  貿易、アウトソーシングと失業
  金融システムへの移民のアクセス
  グラジュアリズム
  欧州通貨統合のメリット
  中央銀行の“トーク”と金融政策委
  インフレファイター・ボルカーの評価
  原油価格高騰と米国経済
  生産性の向上とIT革命
  マネーサプライへの誤解


第2章 資産バブルに悩まされるFRB
   ◎資産価格と金融政策の関係

1 資産価値の変動がもたらす不安定性

  ガルブレイス指摘「金融上の記憶は二〇年しか続かない」
  欧米の中央銀行関係者、BISも資産バブルに高い関心

2 グリーンスパン議長と資産バブル

  「根拠無き熱狂」、秘められたキーワード
  FRB理事もキーワードを見逃す
  議会はグリーンスパンの口先介入に猛反発、ルービンは擁護
  資産効果による景気過熱を警戒
  問い掛けを続けるグリーンスパン、高まる議会での非難
  反対を押しのけて二年ぶりの利上げ決定
  アジア通貨危機がニューヨーク市場を直撃
  株価押し上げトークに転換したグリーンスパン
  ロシア金融危機で開いたバブル化への道
  プレルFRB調査統計局長の警告
  バブル破裂後の大幅利上げと二〇〇一年一月の電撃利下げ
  FRBも日銀と同様の判断ミスを行っているのだが…
  バブル退治政策だったことを認めたグリーンスパン証言
  「私の判断は間違っていなかった」胸を張るグリーンスパン
  住宅ブームに対する“マエストロ・トーク”
  「住宅フロス」はカプチーノコーヒーの香り?

3 バーナンキ議長と資産バブル

  バーナンキ“教授”の日本のバブル分析
  バーナンキ“FRB理事”「安全なバブル潰しは不可能」
  ニューヨーク連銀総裁「困難だが中央銀行はチャレンジする必要がある」
  サンフランシスコ連銀「バブル潰しを行う前の三つのクエスチョン」
  イングランド銀行「フレキシブル・インフレ・ターゲットは有効」
  日本のバブル分析「低金利神話が期待を強気化させた」
  投機心理に与えた“フロス発言”の影響
  バーナンキ議長はユーフォリアにどう対処するか?


第3章 FRBの舞台裏
   ◎組織の成り立ちとFOMCの内側

1 分散化された中央銀行システム

  なぜ一二地区連銀と理事会という形態なのか?
  黎明期の連邦準備制度
  分散型中央銀行のルーツ
  ウィルソン大統領が提唱した「連邦準備理事会」
  地区連銀一二行は上下両院調整の産物
  最大のドラマは地区連銀所在地の決定
  一万マイルの地方行脚
  アンケート調査で連銀所在地を選定
  難航したFRB理事の議会承認
  欧州金融システムの投入に尽くしたウォーバーグ理事

2 金融政策の最高意思決定機関

  連銀の資金稼ぎが生み出したFOMC
  ニューヨーク連銀総裁の慧眼
  イングランド銀行とニューヨーク連銀との協調緩和
  バブル破裂を傍観した連邦準備制度
  連邦準備制度の再出発
  妥協の産物だったFOMCメンバー構成

3 現在のFRBボードメンバーの横顔

  ロジャー・ファーがソン副議長
  マーク・オルソン理事
  スーザン・シュミット・バイズ理事
  ドナルド・コーン理事

4 全米に張り巡らされた地区連銀のネットワーク

  連邦準備銀行=地区連銀
  異なった公定歩合に地方分権の名残

5 現在の地区連銀総裁の横顔

  (1)キャシー・ミネハン第十二代ボストン連銀総裁
  ('2)ティモシー・ガイトナー第九代ニューヨーク連銀総裁
  (3)アンソニー・サントメロ第七代フィラデルフィア連銀総裁
  (4)サンドラ・ピアナルト第一〇代クリーブランド連銀総裁
  (5)ジェフレー・ラッカー第七代リッチモンド連銀総裁
  (6)ジャック・グイン第十三代アトランタ連銀総裁
  (7)マイケル・モスコウ第八代シカゴ連銀総裁
  (8)ウィリアム・プール第二代セントルイス連銀総裁
  (9)ゲリー・スターン第一一代ミネアポリス連銀総裁
  (10)トーマス・ホーニグ第八代カンザスシティ連銀総裁
  (11)リチャード・フィッシャー第一一代ダラス連銀総裁
  (12)じゃネット・イエレン第一一代サンフランシスコ連銀総裁

6 FOMC(連邦公開市場委員会)の舞台裏

  FOMC投票権に地域格差
  FOMCの議事進行
  ご当地事情満載の地区連銀総裁コメント
  「ブルーブック」で金融政策の選択肢を説明
  伝統的にコンセンサスを重視
  公定歩合の決定
  記者室幹事がFOMC声明の解禁時間を決定


第4章 フェデラルファンド市場の真実
   ◎その仕組みから公開市場操作の手法まで

1 フェデラルファンド市場とは何か?

  フェデラルファンド金利と米国経済の関係
  フェデラルファンド市場=マネーの卸売市場

2 準備預金最終日のクライマックス

  最大手インターディーラー・ブローカーの現場
  二〇〇六年一月四日夕方のフェデラルファド市場
  日本のコール市場との比較

3 フェデラルファンド金利の変動パターン

  金利を変動させる季節要因
  FOMCが近づくと金利が急上昇する新現象

4 ニューヨーク連銀が担う金融調節の機能

  準備預金残高を変動させる主な要因
  参考:資金繰りの効率化を進める米国財務省
  公開市場操作実行までのプロセス
  ニューヨーク連銀の資金需給予想“成績”
  オペレーションの種類
  準備預金残高とフェデラルファンド金利の関係
  為替市場介入の手法


第5章 神殿の扉を開く
   ◎市場との対話をどう進めるか

1 FOMC声明一〇年の軌跡

  慎重かつ果敢なグリーンスパン議長
  利上げのゴングを鳴らす
  「みぞおちが痛む」
  突然の声明発表で混乱する記者室
  二〇〇四年ガイダンス付き利上げ局面が始動
  雇用統計の衝撃
  ロックアップ・ルームに緊張走る
  雇用統計のインパクトは議長証言と同格
  「辛抱強さ」も限界に
  デフレ危機の克服を宣言
  眠りから覚めたタカ派

2 FOMC声明は両刃の剣

  声明にディスインフレ・リスクを明記
  「リスク・バランス評価」を二つに分割
  「非伝統的金融緩和」も予断を膨らます
  割れたFedウォッチャーの観測記事
  二週間で景気認識が劇的好転
  総合判断でも「ディスインフレ・リスク」を明記
  グリーンスパン議長「時間軸」を表明
  「非伝統的な金融政策」は必要ない
  声明への時間軸導入に七人が反対
  不確実性を含むFOMC声明
  二〇〇三年一二月会合で「相当の期間」は根拠失う
  グリーンスパン議長の対話能力に疑問符
  遅行指標と一致する金融政策
  「Measured」に込めた狙い
  金融政策の出遅れ懸念
  大幅利上げ示唆が混乱に拍車
  ガイダンスの罠
  金融政策は「長期プログラム」
  一年半に及んだ「出口作戦」
  「終わり良ければ、すべて良し」
  グリーンスパン議長の負の遺産


第6章 FRBはいかにして独立性を得たか
   ◎ホワイトハウス、議会との関係

1 中央銀行の独立性とは?

  なぜ独立性が求められるのか
  一四人の大統領のうち、十二人がFRBに圧力を……

2 マッケーブからボルカーまでのFRBと政府の対立

  泥沼の闘いの末にアコード締結
  マッケーブ衝撃解任「イージーマネーを望む企て」
  政府との協調か?独立性か?揺れたFOMC
  ジョンソン大統領に罵倒されたマーチン
  マーチンを屈辱的退任に追い込んだニクソン大統領
  FRB批判がヤブヘビとなったカーター大統領
  ボルカー議長、レーガン派理事の包囲網で孤立

3 グリーンスパン議長の老獪な政治との付き合い方

  “慎重なペースの利下げ”に激怒したブレイディ財務長官
  じらされたグリーンスパンの再任
  FRB独立の立役者、ロバート・ルービン
  ルービン「真の中央銀行の独立性は、経済にとって最適なレジーム」
  変わり身の早さ、あいまいな言葉で両陣営に足場を築く
  「同じ状況に立たされれば、また同じことをする」
  「地政学的リスク」の背後にチェイニー副大統領
  ブッシュ勝利宣言で消えた「地政学的リスク」
  ハリケーン被害で頼ってきたブッシュ大統領
  コンセンサス形式も政治力の源泉
  上下両院お別れ公聴会における賞賛の嵐
  「バランスのとれた秘密保持」からバーナンキの「明示主義」へ


コラム

  1 バーナンキは熱狂的レッドソックス・ファン
  2 FRB理事の個人金融資産
  3 世界のインフレ・ターゲット採用国の実際
  4 FOMC vs 日銀金融政策決定会合
  5 FOMC議事要旨の速読術
  6 一二地区連銀の総資産比較
  7 非伝統的オペレーションで迷走したFOMC
  8 「バイアス」から「リスク・バランスの評価」に移行
  9 グリーンスパン前議長と金融担当記者の関係
  10 A、B、Cクラスに分かれるワシントンのパーティー
  11 FOMC声明に掲載された「地政学的リスク」



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著者紹介

加藤 出(かとう・いずる)
東短リサーチ(株)取締役チーフエコノミスト
1965年生まれ。88年横浜国立大学経済学部卒業。同年、東京短資(株)入社。巨額の資金が取引される短期金融市場の一線でブローカーを務め、98年よりエコノミスト兼任。2002年より現職。同年、米国ニューヨークの大和総研アメリカ、ライトソンICAP(FRBウォッチングのシンクタンク)にて客員研究員。市場の現場の視点から金融政策予測を行っている。「加藤出ウィークリーレポート」(日本語・英語)はブルームバーグ、日経QUICKによりグローバルに配信されており、海外中央銀行、国際機関、ヘッジファンドなどにもファンが多い。著書に『日銀は死んだのか?』(日本経済新聞社)、『新東京マネーマーケット』(有斐閣・共著)、『メジャーリーグとだだちゃ豆で読み解く金融市場』(ダイヤモンド社)。週刊ダイヤモンド、朝日新聞、週刊金融財政事情、月刊マネージャパンなど連載多数。

山広恒夫(やまひろ・つねお)
ブルームバーグ・ニュース・ワシントン支局エディター
1950年生まれ。73年3月青山学院大学史学科(西洋史専攻)卒。同年4月時事通信社入社。同社外国経済部、ロンドン特派員。英ジェームス・ケーペル証券シニアエコノミスト、共同通信社ロンドン、ワシントン特派員、金融証券部次長を経て、2000年11月からブルームバーグ・ニュース・ワシントン支局勤務。エディターとして、FRBなど米経済動向に関する記事の編集に携わる。ブルームバーグ・テレビ「ワシントン・リポート」で、米国経済・金融政策について解説している。


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