ブックタイトル週刊ダイヤモンド18年6月16日号

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週刊ダイヤモンド18年6月16日号

特集借金経営のススメめに銀行に泣き付いて借金をすることもあった。そして、幾つかの企業は借金で首が回らず破綻に追い込まれた。 そんな期間があまりに長かったため、「借金=悪」という図式が意識に植え付けられているのだ。要は、「バブル崩壊後に銀行が主導した財務リストラ期の感覚のままでいる」(松田教授)わけだ。 しかし、ファイナンスの専門家や企業で財務を担当するCFO(最高財務責任者)の一部は、「日本では借金に対する誤解が強過ぎる。借金には良い借金と悪い借金があって、きちんと見極めるべき」と力説する。 詳細は特集の中で述べるが、悪い借金とは経営危機にある会社が生き延びるためにダラダラと続ける借金。良い借金とは、成長の機会を逃さないための借金だ。 借金をしても、それをきっかけに成長し、返済能力も上がる。そんな借金は良い借金といえる。 実際、日本企業の借金の中身は変化しつつある。財務省の「法人企業統計」によれば、企業の借金の額はリーマンショック後に減少したものの再び増加している。 しかし、中身を見ると、単純に増加しているのではない。金額だけでいえば、リーマンショック前と同水準だが、それを稼ぐ能力(経常利益)で割った値は低下を続けている(上図参照)。 つまり、金額は増えたが、返す能力の裏付けも増しているという意味で、借金の性質が違うのだ。本来なら、借金の良しあしはそのように稼ぐ能力や他に持っている資産なども考慮して、総合的に判断すべきなのだ。低金利の今良い借金を見直そう もう一つ大きな誤解が、株主が出してくれたおカネに対する認識だ。Part2で詳細を述べるが、「株主が出してくれたおカネは返さなくていい楽チンなおカネだ」と誤解している経営者がいる。 企業の資金調達では「調達コスト」という概念があり、そのコストはいかなる場合でも「借金<株主からのおカネ」なのである。言い換えれば、借金が少な過ぎるのは高コストであり、効率が悪い。 最後の誤解は「借金をしている企業は手元におカネがない」というもの。こちらもそうは言い切れず、借金をしつつも手元に現金を置き、有事に備える企業もある。 というわけで、「うちは無借金経営」と胸を張る経営者がいても、それは必ずしも誇れることではない。成長していて、かつ無借金ならまだしも、座して死を待つような停滞状態で、リスクを取って新事業をやらないのなら、企業の存在意義にも関わる。 それは中小企業でも同じだ。中小企業への融資の際、銀行は自己資本比率の高さをあまり重視していない。それよりも、その企業の稼ぐ能力であるキャッシュフローに重きを置いている(50㌻参照)。 現在は、未曽有の低金利だが、多くの専門家は長期では金利が上昇するとみている。企業にとっては今が借り時ともいえそうだ。 もちろん、際限なく借金をすることを勧めるわけではない。 成長の原動力として、従業員、株主、銀行、経営者の全員が幸せになる借金。そんな良い借金の概念が今の日本には必要なのではないだろうか。稼ぐ力に対する借金の大きさは減っている!日本企業の有利子負債額と経常利益に対する割合1984年度86 88 90 92 94 96 98 2000 02 04 06 08 10 12 14 166/16号 1特 P29 イラストレーターCS5 オーバープリント済み 岩崎01234560510152025有利子負債÷経常利益(右目盛) 30有利子負債額(左目盛)*経常利益は金融・保険を除く。財務省「法人企業統計」を基に本誌編集部作成。法人企業統計の調査は、2016年度版ではおよそ284万社を母集団としており、日本企業全体のデータとして捉えることができる(億円) (%)EPA=時事最大規模の買収を決断した武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長兼CEO。数兆円の借金をする29 週刊ダイヤモンド 2018/06/16