ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー 2012年7月号 小売業は復活できるか
ダイヤモンド社
価格(税込):¥ 2,000
発行年月: 2012年6月 取り扱い可能
雑誌コード:059690712
Feature Articles
小売業は復活できるか
業績低迷の悪循環から脱却する方法
小売業は人件費を削ってはいけない
マサチューセッツ工科大学 スローン・スクール・オブ・マネジメント 准教授 ゼイネップ・トン
小売業は常に激しい価格競争にさらされている。そんななかで利幅を何とか確保しようとすれば、つい人件費に手をつけてしまいがちだ。より少ない人数で現場を回そうと試み、教育や研修に至っては二の次となる。
しかし、待ってほしい。高業績を上げている企業をよく見ると、人件費カットどころか、従業員への投資を積極的に行っている。
人員をケチれば、オペレーションに響く。現場は疲弊し、離職率が高まり、顧客対応の質が下がり、それが業績悪化につながる──小売業にありがちな悪循環を断ち切るにはどうすればよいか。
コンビニエンス・ストアのクイックトリップ、スーパーマーケットのメルカドーナやトレーダー・ジョーズ、ホールセール・クラブのコストコなど、成功企業からその秘訣を学ぶ。
小売業界のカリスマが語る
アップルストア成功の教訓
JCペニー・カンパニー CEO ロン・ジョンソン
[聞き手]『ハーバード・ビジネス・レビュー』シニア・エディター ガーディナー・モース
2011年11月に老舗百貨店JCペニーのCEOへの就任が決まったロン・ジョンソンは、小売業界のカリスマ的存在として知られる。2000年にターゲットから、アップルの直営店担当シニア・バイス・プレジデントに就任したロンは、スティーブ・ジョブズと小売店の常識を破る施策を次々と展開しながらアップルストアを立ち上げた。その結果アップルストアは、1店舗当たり年間平均4000万ドルを売り上げており、今日では、小売業の歴史上最高の業績を誇る小売店となったのだ。
JCペニーで「老舗復活」への期待が高まるジョンソンは、「終わった」といわれる小売業界の未来をどのように洞察しているのであろうか。本記事は、HBR誌シニア・エディターのガーディナー・モースがジョンソンにインタビューしたものだ。イノベーション、リーダーシップ、そして直感の重要性について語ってもらった。
無数の顧客接点が融合する
デジタルを取り込むリアル店舗の未来
ベイン・アンド・カンパニー パートナー ダレル・リグビー
進化し続けるデジタル・リテイリングは、その過程で急速に別のものに変身しつつあり、「オムニチャネル・リテイリング」という新しい名称が生まれている。これは、小売業者が無数の販売チャネル(ウェブサイト、リアル店舗、キオスク、DMやカタログ、コール・センター、ソーシャル・メディア、携帯端末、ゲーム機、テレビ、ネットワーク家電、在宅サービス、その他もろもろ)を通じて、顧客と相互交流できるようになるという小売戦略を意味している。
独立した各チャネルを、単一のシームレスなオムニチャネル体験に融合させるような、まったく新しい視点を取り入れない限り、昔気質の小売業者はおそらく、時代の波に押し流されるだろう。
オムニチャネル戦略に成功することの意味は、単にその企業の生き残りを保証するだけに留まらない。それは、ほぼ半世紀ごとに到来する、顧客期待と顧客経験の革命をもたらすものである。小売業は今後、デジタルとリアルの両分野が競合するのではなく相互補完の関係となり、それによって売上げは伸び、コストは下がるだろう。
ITが可能にした高度なカスタマイズ化
データが導く顧客への最適提案
バブソン大学 特別教授 トーマス H. ダベンポート
シティバンク グローバル・アナリティクス 担当ディレクター レアンドロ・デール・ミュール
デロイト・コンサルティングLLP プリンシパル ジョン・ラッカー
IT、データ収集、分析技術の進歩により、いまや高度にカスタマイズされた提案が可能になっている。最適なタイミング、手頃な価格、適切なチャネルを通じて、消費者が望むような製品・サービスを勧めるのだ。これは「次善の提案」(NBO)と呼ばれ、投資対効果と競争力の両面で影響を与える。
現在では、顧客のデモグラフィックだけでなく、価値観、ライフスタイル、購買行動、位置情報など多様なデータを活用でき、顧客接点となるチャネルの選択肢も広がっている。しかし、対象者の絞り込みやカスタマイズが不十分なままNBOを行う企業も多い。
NBO戦略を実現するには、「目標の設定」「データ収集」「分析と実行」「学習と発展」の4つのステップが不可欠だ。
自社の顧客や提供する製品・サービス、顧客の購入状況などを踏まえ、統計や予測技術、人間の判断を組み合わせ、試行と検証を重ねていけば、より高度で効果的な顧客提案が可能となる。
守るべき4つのルール
総合スーパーが海外進出に成功する時
INSEAD教授 マーセル・コースジェンス
ハーバード・ビジネス・スクール 教授 ラジブ・ラル
海外進出する企業は多いが、グロサリー小売業では、標準的なグローバル化戦略が期待するほどの効果を出さないことが多い。世界的な大手企業でさえ、成功と失敗を経験している。グローバル化を成功させるためには、業界特性を踏まえた戦略が必要である。
筆者らの研究から、小売企業のグローバル化は、短期的な売上高や利益の向上に直結しないことが判明した。海外市場では多くの参入障壁に直面するうえ、固定費が高く利幅が小さいという事業特性により、利益が出るまでに時間がかかる。規模の効果も出しにくく、その国だけで活動している地元企業との競争にもさらされる。
小売業が海外に進出する際には、やみくもに事業拡大を図るのではなく、「グローバル化の要は自国市場」「市場には常に新しいものを」「相乗効果よりも差別化」「参入タイミングが重要」という4つのルールに則して戦略を立て、現地のニーズを理解したうえで、地道に展開していくべきである。
HBR Articles
「ROE」と「競争」は絶対的な概念か
資本主義:進化の罠
モニター・タレント 創業者 クリストファー・マイヤー
『ハーバード・ビジネス・レビュー』エディター・アット・ラージ ジュリア・カービー
先進国で受け入れられている資本主義の精神。そこには2つの素晴らしい概念がある。それは、ROE(株主資本利益率)と「競争」だ。これらの概念はもともと、「最大多数の最大幸福」の実現を目指していた時代に生まれたものだ。「いかに資源を配分するか」というような差し迫った問題に対して、効果的な解決策と考えられていた。
数世紀経った現在、このROEと競争の概念は、先進国で非常に重視されている一方、対処すべき課題が変化しているため、食い違いが起きている。そのため、いまや多くの人が「資本主義は失敗した」と断言している。しかし、広い意味での資本主義はいまもなお、社会を繁栄へと導き、生活の質を向上させるため最も効果があり、融通が利く、盤石な仕組みである。
本稿では、ROEと競争の本質を理解することから、進化した資本主義の罠を解説する。あわせて、新興国の発展から新たな資本主義の秩序が生まれる可能性を検証する。
世界の課題を解決する
HBR 13の提言
『ハーバード・ビジネス・レビュー』編集部/編
2008年のリーマン・ショック以降、世界は先の見えない不安のなかに生きている。世界経済は回復の兆しと崩壊の予感との間で揺れている。企業は金縛りの様相だ。産業界は2兆ドルもの現金を抱えながら、リスクに怯え、安全策に徹するあまり、新鮮なアイデアが著しく欠如している。いまほど世界が創意と勇気を必要としている時はない。いま必要なのは緊縮(austerity)ではなく、蛮勇(audacity)ともいうべきアイデアだ。
本稿では、こうした観点から各界の権威および第一人者にお願いして、大胆な提言を寄せていただいた。これらは、巨大で困難な難問に手をつけると同時に、社会経済全体を改善してしまおうというアイデアであり、大胆不敵だがけっして無謀なものではない。真のビジネスチャンスを示すものともいえるだろう。これらの話は一方的な講義ではなく、議論のきっかけとなるものである。
1 「国家株」による危機回避策
エール大学 教授 ロバート J. シラー
2 給与と成果は切り離すべし
ワーウィック・ビジネス・スクール 特別教授 ブルーノ S. フレイ
ワーウィック・ビジネス・スクール 教授 マルギット・オステルロー
3 海洋の20%を禁漁区に
ナショナル・ジオグラフィック・ソサエティ 客員探検家 エンリク・サラ
4 ベンチャー・キャピタルに求められる大胆な投資
ファウンダーズ・ファンド パートナー ブルース・ギブニー
ファウンダーズ・ファンド パートナー ケン・ハワリー
5 肥満と飢餓への解決策
30プロジェクト 創設者兼エグゼクティブ・ディレクター エレン・グスタフソン
6 BOP層に電力を届けるために
アメリカ・エネルギー省 エネルギー先端研究計画局 ディレクター アルン・マジュムダール
7 NASAに本来の任務を与えよ
編集者 グレッグ・イースターブルック
8 顧客データはもはやマーケティング・ツールではない
ハーバード大学法科大学院 バークマン・センター 特別研究員 ドク・サールズ
9 自分が望む死に方を選ぼう
コラムニスト エレン・グッドマン
10 アフガニスタンで中国と連携すべし
アメリカ海軍 大佐 ウェイン・ポーター
11 クラウドソースで上司を査定する
ハーバード・ビジネス・スクール 教授 リンダ A. ヒル
著述家、エグゼクティブ・コーチ ケント・ラインバック
12 世界の発展は私立大学の活用から
ニュー・アメリカ研究機構 上級研究員 パラグ・カンナ
パルテノン・グループ アジア地域責任者 カラン・ケムカ
13 犯罪防止に民間企業の活用を
グーグル 会長 エリック・シュミット
学校教育は競争力の原点
GDP成長率と学力テストは相関する
ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ基金 次世代学習グループ・リーダー ステイシー・チルドレス
アメリカの学校教育の質の低下が著しい。OECDの2009年国際学力調査で、アメリカは加盟国中、数学25位、読解力17位、理科22位という結果に終わり、トップの中国とは大きく水を開けられた。国内調査でも習熟度の低さや人種間格差などの問題が目立ち、産業界で求められる大卒者の供給も不足傾向にある。長期的な国の競争力は学力テストの得点と相関性があるとする研究も発表され、まさに憂慮すべき事態である。
教育の質の向上においてカギとなるのがITの活用である。習熟度に応じた教育ソフトの活用や、対面とオンラインでの指導を融合させることで、生徒の習熟状況に沿った個別指導が低コストで実現できる。実際に、自習用ソフトウエアをうまく取り入れて低所得世帯の子どもの学力を向上させた地域や、完全個別指導プログラムで成果を上げている事例もある。
このような取り組みをさらに強化していくことが、学力向上や国の競争力につながる。
OPINION
リーダーシップの鍛え方
東京理科大学 教授 伊丹敬之
CHIEF OFFICER
顧客の変革をサポートするためみずからを変革してきた30年
アドビ システムズ 代表取締役社長 クレイグ・ティーゲル
BRAIN FOOD
社員のタイプに応じて働く意欲を引き出す法
キングストン・ビジネス・スクール ディレクター ケイティ・トラス
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス 講師 エマ・ソーン
テクノロジーの早期採用が国富を増大させる
ハーバード・ビジネス・スクール 准教授 ディエゴ・コミン
サンフランシスコ連邦準備銀行 シニア・リサーチ・アドバイザー バート・ホビン
ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー 2012年7月号











