目次


未曾有の経済危機 克服の処方箋

国、企業、個人がなすべきこと


[目次] [著者紹介]


表紙




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はじめに


第1章 世界的巨大バブルの大崩壊

1 GDP二桁マイナス成長の衝撃と恐怖

未曾有の経済危機
マイナス一〇%と予測したが、自分でも信じられなかった
日本はアメリカより深刻な問題に直面する
「アメリカ発金融危機」のとばっちりではない
世界的な巨大バブルの膨張と崩壊
日本経済は景気回復前の状態に戻る
アメリカや中国の景気刺激策はあてになるか?
他力本願からの脱却を
有効需要補填は必要だが、出口戦略の明確化が重要

2 輸出立国モデルの終焉──日本の輸出は驚くべき減少を示した

赤字に転じた日本の貿易収支
輸出が〇八年一一月に急減
輸出減少はその後も続く

3 急激な生産収縮と企業収益の激減

驚くばかりの急激な生産収縮
急減する日本企業の利益
株価は企業収益予想を正しく織り込んでいるか?
崩壊状態の輸出関連企業利益

4 世界的巨大バブルの崩壊が経済縮小をもたらす

巨大な世界的バブルが膨張した
住宅価格上昇が消費を増大させた
消費バブルが経常収支の赤字を増大させた
円安に支えられた日本の輸出増
日本はバブルを支え、それによって景気回復した
巨大バブルの同時崩壊で、日本の輸出が激減
バブル後始末の負担は輸出国が負う
いま明らかになったモノづくり大国の実像


第2章 アメリカ経済の収縮はいつ終了するか?

1 アメリカのGDPと貿易の動向

日本の立場から重要なのは貿易動向
危機終息までの目安は経常収支の赤字
アメリカの実質GDPの動向
自動車に続いて中国からの輸入が急減
名目と実質の乖離

2 アメリカの消費支出と消費者ローンの動向

縮小しだしたアメリカの消費
消費者ローンの推移
住宅価格の動向

3 アメリカ経済の今後の見通し

調整の規模:経常赤字が半減する必要がある
調整のスピード:調整が早期に終了する可能性が出てきた
さまざまな機関による経済成長率の予測
プライスメカニズムがどの程度機能するか

4 金融安定化と財政による景気刺激のゆくえ

金融機関の損失見通しが拡大
アメリカでの金融危機対策:資本注入
二〇〇九年二月の金融危機再燃
CDSの想定元本と市場価値の混同
CDSは時限爆弾?
安易な引受けこそが問題の本当の原因
銀行支援は「レモン社会主義」?
日本の経験は教える価値のあるものか?
財政による景気刺激は機能するか?

5 今回の経済危機が提起した新しい問題

消費支出は金融政策では制御できない
資本移動を通じる金融緩和の世界的伝播


第3章 深刻な危機に直面するもう一つの輸出大国・中国

1 中国と日本との関係緊密化

増大した中国と日本の貿易
日本は中国を経由してアメリカに輸出している
いびつな輸出依存経済
日本も外需依存を高め、中国への依存を高めた
中国とアメリカの強い相互依存関係

2 世界的バブル崩壊の影響が中国にも及び始めた

激減する中国の輸出入
IMFと世銀が予測する中国の不安定化
倒産が相次ぐ中国輸出関連企業

3 日本の対中国輸出が急減

高成長を続けた日本の対中国輸出が急減
日本の対中国輸出の減少は不可避

4 中国の脆弱な社会基盤

輸出の激減は中国経済の本質的な危機
緊急経済対策は有効か? 中国の緊急経済対策は輸出産業を助けない
合理的な不満処理制度を持たない中国


第4章 日本経済の今後の見通し──GDPが一〇%縮小して景気回復前に戻る

1 日本経済の落ち込みはどこまで続くか?

機械的予測計算
アメリカの動向から今後を判断する
日本の貿易動向から今後を判断する

2 所得・支出モデルによる予測

現時点では簡単な「所得・支出モデル」が最も有用
輸出と設備投資を外生とし、乗数効果を考慮したモデルを解く
結論(1)危機が終息するまでに実質GDPが一〇%減少する
結論(2)日本経済は景気回復前に戻る
景気回復前というより、一九八〇年代への逆戻り?
結論(3)失業率が六%程度にまで上昇する
価格の調整機能の評価

3 さまざまな機関による予測との比較

経済見通しはおしなべて楽観的だった
IMFと日銀の改訂見通し:日本の成長率は〇九年マイナス二%台
予測が楽観的なバイアスを持つ理由
経済激変期における予測の意味
経済理論と「大まかな」モデルが、いま意味を持つ

4 為替レートはどうなるか?

均衡為替レートはどの程度か?
実質実効為替レートは正常値よりまだ二三%円安
自然な実質ドルレートは一ドル=六〇円
ビッグマック指数では一ドル=八二円
円高が進めば企業利益はさらに悪化する

5 日本の金融危機がこれから生じる

不良債権の増加と保有株式の価格低下
ついに発動された日銀プット

6 未曾有の税収落ち込みが生じる

企業業績悪化で税収が激減
埋蔵金論争に見る財政の末期的状況


第5章 問題の本質は何か?──空虚な批判でなく、現実を変える議論を

1 空虚で誤解に満ちた議論が大流行

「アメリカだけが失敗した」とするアメリカ没落論
「問題があるからダメ」では、世界は進歩しない
分析に基づく反省こそが必要

2 誤解に基づく市場経済批判

TINA:市場に代替する仕組みは存在しない
ルールなしには市場は機能しない
所得再分配が必要ないとする先進国はない
底が浅い「アメリカ流資本主義」批判
新自由主義をどう評価するか?

3 見当違いの先端金融批判

金融が虚業でモノづくりが実業か?
金融工学やファイナンス理論を用いなかったから問題が生じた
金融規制は必要だが難しい
イギリスの金融立国は終わったか?

4 事実に反するアメリカ凋落論

アメリカに替わって世界を牽引できる国はあるか?
ドル離れが起きているか?
ドルの地位変化は三〇年前のこと
デカップリングして成長を続けるIT関連の先端企業

5 大きければ安全なのか?

ヨーロッパ小国が直面した危機
大きいから安全なわけではない
大きいことで回避できるリスクとできないリスク


第6章 この異常事態にどう対処するか?──内需拡大の実現戦略

1 本当の論点は外需依存vs内需志向

アメリカの過剰消費とアジアの過剰貯蓄
国際収支の発展段階説
日本の国際収支構造の変化
輸出で外貨を稼ぐ必要はない
資産大国にふさわしい賢明な資産運用が必要
日本の外需依存景気回復は長期トレンドに逆らうものだった
公共事業圧縮は一律に行なうべきではなかった
雇用や賃金の問題を、内需転換の観点から考えるべきだ
必要なのは内需中心経済の構想

2 本来必要なのは産業構造の転換

日本経済が抱える長期的課題
外需依存からの脱却
内需志向経済のいくつかの可能性
出生率引上げ政策と内需拡大

3 ケインズ政策を行なうべき事態が戦後初めて生じた

需要激減への対処
金融政策でなく財政政策が必要
ケインズ経済学が初めて意味を持つ
無駄の大盤振る舞いが招来される危険
無駄遣いの大盤振る舞いも止むを得ない?
有効需要の拡大なのか、救貧策なのか
内需拡大でなすべきことは多い
出口戦略が重要
財政拡大策は輸出産業を助けない

●あまりに現実とかけ離れていたケインズ経済学

4 日銀引受け国債で財政支出拡大──パンドラの箱を開ける

未曾有の規模の財政拡大が必要
日銀引受け国債発行しか方法はない
副作用の危険はきわめて大きい

5 政府紙幣や無利子国債は天下の偽策

奇策というより偽策
政府紙幣は将来の金融政策を不可能にする
政府紙幣での財源調達は財政民主主義の否定
無利子国債で巨額の財源調達はできない

6 日銀のCP引受けと株式購入の問題点

日銀のCP購入
銀行保有株買上げは「貯蓄から投資へ」と矛盾する
「日銀プット」はモラルハザードを引き起こす


第7章 危機に打ち克つため、個人がなすべきこと──必要なのは金融投資でなく自己投資

1 なぜ金融投資でなく自己投資なのか?

急増しているビジネススクール入学志望者
金融投資のリスクはこれまでになく大きい
人的投資の必要性が強まっている
組織人から、市場価値がある人間に
金融リテラシー教育は、有害ですらある

2 日本が遅れている職業人の再教育

ビジネススクールの人気が高まった理由
「シグナル」としての教育の機能
学生間の情報交換も大学院の効用
MBAは収益率の高い投資
日本企業の人材政策が変わってほしい
経営者にとっても自己投資は重要

3 自己投資の手段は大学院だけではない

シグナルとしての資格
本を読む人と読まない人の違いは大きい
「問題を探すこと」の重要性
私の経験

4 危機をチャンスに転化し得るか?

起業は容易になっている
旧世界の没落の後に、新しい世界が生まれる

補章 急降下は終わった その先の戦略は?

IMFの経済見通し
輸出と生産の急減過程の出口が見えてきた
八〇年代に逆戻りする可能性
経済構造の基本的な改革が必要


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索引



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著者

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。
〈主要著書〉
『情報の経済理論』(東洋経済新報社、1974年、日経経済図書文化賞)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社、1980年、サントリー学芸賞)、『土地の経済学』(日本経済新聞社、1989年、東京海上各務財団優秀図書賞、不動産学会賞)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社、1992年、吉野作造賞)、『1940年体制(新版)』(東洋経済新報社、2002年)、『日本経済は本当に復活したのか』(ダイヤモンド社、2006年)、『資本開国論』(ダイヤモンド社、2007年)、『モノづくり幻想が日本経済をダメにする』(ダイヤモンド社、2007年)、『円安バブル崩壊』(ダイヤモンド社、2008年)、『世界経済危機 日本の罪と罰』(ダイヤモンド社、2008年)、『金融危機の本質は何か』(東洋経済新報社、2009年)等多数。
◆ホームページ:http://www.noguchi.co.jp/


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