目次


世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか


[目次] [著者紹介]


表紙




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第1章 奈落のあとは停滞

(1)半年で一変した日本経済は元に戻らない
二〇〇八年秋からの未曾有の激変
バブルは再現できないので、元に戻らない
かつての円安は再現できない
回復が見込めないため、設備投資が落ち込んだまま

(2)輸出は回復するが元に戻らない
輸出急減による生産の急収縮
輸出急減は二〇〇九年一月で終了
二〇〇九年四月以降の緩やかな回復
対中国輸出が回復し、対米輸出が落ち込んだまま
輸出はどこまで回復するか
外需主導だが、前回とは違う

(3)過去のGDPレベルを回復できない
未曾有のGDP落ち込み(二〇〇九年一〜三月期)
外需によってプラス成長に転じはしたが……(二〇〇九年四〜六月期)
It’s levels, stupid.(二〇〇九年七〜九月期)
大幅に下方修正された速報値
年率換算で三・八%の成長は購入支援策の影響(二〇〇九年一〇〜一二月期)

(4)「さらに失われる一五年」の入り口に立つ日本
すでに失われた一五年
減少する国内需要を輸出で補ってきた
外需依存の景気回復で古い産業構造を温存
いままた同じ過ちを繰り返そうとしている
一九八〇年代への逆行という悪夢

◎第1章のまとめ


第2章 日本が回復できない理由


(1)世界は回復するが日本は回復しない
GDPや株価の回復で遅れる日本
日本企業の利益は大きく落ち込み、危機前の水準に回復しない

(2)回復が遅い理由は製造業比率が高いから
製造業には生産拡張の後遺症が残る
金融と情報関連が伸び、製造業が落ち込む
製造業中心国の落ち込みが激しい
後遺症を負ったのはアメリカでなく日本

(3)じつは膨大な企業内失業
構造的な過剰雇用
雇用調整助成金が失業顕在化を抑えている
潜在的失業率は一四%にもなる
雇用保蔵は潜在的な失業
本来必要なのは流動化政策
各党マニフェストは雇用の経済メカニズムを理解していない
雇用構造を大変革しないと雇用が生まれない

(4)過剰設備をどうするか
政府支援するなら設備廃棄に対して
所得はGDPより大きく落ち込んでいる
固定資本の老朽化が急速に進む

◎第2章のまとめ


第3章 激減した企業利益


(1)赤字に転落した製造業
製造業が史上空前の赤字を記録
赤字であるのに、株価は上昇した

(2)なぜ製造業の利益が激しく落ち込むのか?
売上減は非製造業も同じだが、利益の落ち込みでは大きな差
製造業の総資本営業利益率は回復したが三%台

(3)政府支援に依存してソ連化する製造業
輸出増が隠した製造業の過剰設備
製造業の回復は政府の支援策による
依然として低迷する企業利益
責任転嫁と偽りの対処
ソ連国営企業と同じになった日本の製造業

(4)JALと二重写しに見える日本
JALの思い出──一九六〇年代と九〇年代の違い
日本の高度成長に合わせて成長した
日本はJALと同じ問題を抱えている

◎第3章のまとめ


第4章 問題山積の自動車産業


(1)二〇年遅れのGM破綻──日本にも教訓
やっと破綻したGMとクライスラー
政治に頼れば問題が隠蔽されるだけ
いま政治依存に踏み込む日本の自動車メーカー

(2)自動車産業が抱える構造的問題
長期的な減少傾向にあった自動車需要
国内需要の落ち込みを輸出でカバーしたが、金融危機で急減
これから問題になる過剰生産能力
電気自動車時代に日本の自動車メーカーは生き延びられるか?

(3)問題だらけの購入支援策
ドイツ、アメリカでは自動車購入支援策終了後に販売が急減
購入支援策が鉱工業生産指数を約六%かさ上げ
時限爆弾を抱える日本経済
購入支援策は政府依存体質を強める
自動車メーカーの利益増は支援策のコストと同規模

(4)新興国市場は自動車産業の救世主にはならない
新興国での需要が増えているのは事実
一台当たりの利益が半分以下になる

(5)トヨタの大規模リコールが投げかける問題
急速過ぎた海外生産拡大
技術に偏っていたグローバリゼーション

◎第4章のまとめ


第5章 回復するアメリカ経済


(1)先端IT企業の目覚ましい利益増
グーグルは五五%増、アマゾンは八九%増
デカップリングしたIT関連企業
不況期にはオンラインショッピングや検索連動広告が伸びる
クラウドは新しい知的革命
新しいものをつくり出すから高収益になる

(2)金融危機を克服したアメリカ
公的資金の返済がほぼ完了した
驚異的な復活を果たしたアメリカの銀行
銀行の損失は全世界で二・三兆ドル
金融危機への対処は半分程度進んだ

(3)アメリカの対外取引と日本
アメリカの赤字縮小は二〇〇九年初めに終了
中国に比べて日本はずっと大きな打撃を受けた
アメリカから資金が引き揚げられた
ドルの価値は金融危機前後で不変
ドル離れは起きていない

◎第5章のまとめ


第6章 中国とどうつきあうか


(1)中国の成長メカニズムは持続可能か?
目覚ましい中国の成長
内需依存の自律的成長に移行したわけではない
「北京コンセンサス」は矛盾を含む

(2)日本の対中国輸出は構造変化したか?
対中国輸出は回復。ただし、ピーク時の九割
中国の輸入における日本の比重は低下している
対中国輸出の品目に変化は見られない
対中国輸出回復の原因は、先進国の消費財輸入増

(3)中国の不動産バブルは対岸の火事ではない
不動産価格のバブルが生じている
不動産バブルの原因は景気拡大策と為替介入
日本の一九八〇年代後半と酷似
元を増価させずに不動産バブルを沈静化できるか
崩壊すれば日本にも大きな影響

(4)疑問が多い中国の経済データ
最も重要視されるGDPデータ
エネルギー使用が減るのにGDPは伸びる?──IEAと中国政府の論争
「エネルギー効率が上昇した」との苦しい説明
「中国の産業構造が大転換した」との説明も

(5)中国の経済データはソーセージのようなもの?
GDPの成長と貿易の二〇%減との関連
中国の実情にはよくわからない面が多い
推計の技術的・政治的側面
中国の経済データがどうつくられているかは詮索しないほうがよい
小売データは家計消費そのものではない
政治的な問題もなくなったわけではない

(6)中国政府と対決したグーグルに拍手
グーグルと中国の「戦争」
ITも市場経済も民主主義も、基盤はすべて同じ
日本企業は中国政府と対決できるか

◎第6章のまとめ


第7章 経済対策を検証・評価する


(1)一時しのぎの緊急避難しか行なわれていない
金融緩和策では経済は活性化しない
二〇〇八年度補正予算と〇九年度予算:定額給付金
二〇〇九年度補正予算での追加経済対策:雇用調整助成金と買い替え支援策
必要なのは財政支出の増加
IMFの評価では、日本の裁量的財政政策規模は大きくない

(2)民主党に求められる整合的政策
一時しのぎ緊急避難策を継続した民主党政権
マニフェストの羅列から脱却する必要

(3)際限なく悪化する財政
経済危機による税収の激減
信じられないような二〇一〇年度予算の姿

◎第7章のまとめ


第8章 日本が進むべき道は何か


(1)新興国シフトは日本の自殺行為
新興国最終需要の大部分は低価格製品
コモディティ生産では、価格競争によって利益と賃金が低下する
海外立地による国内空洞化は不可避
中国メーカーが成長すれば、日本は押し潰される
新興国の低賃金を利用できる製造業に転換すべき

(2)内需主導型の経済へ
「潜在成長力」概念の問題点
金融緩和・円安政策で古い構造を維持してきた
外需依存のビジネスモデルはもう機能しない
新しい需要を国内に見出す
必要なのは都市基盤整備と介護、そして新しい産業

(3)介護における雇用創出プログラム
介護を中心とした新しい雇用創出プログラムが必要
なぜ需給のミスマッチを調整できないのか
介護サービスの需要と供給
マンパワーが確保できないのは待遇が悪いから
公的主体の関与が必要になる理由
サービスの多様化を進め、製造業の転業を促進させる
財政面で抜本的な措置を講じる必要

(4)日本の最大の悲劇は政治の貧困
花見酒経済でもかまわない
政治の貧困と政策能力の低下

◎第8章のまとめ


おわりに

図表目次

索引



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著者

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。
〈主要著書〉
『情報の経済理論』(東洋経済新報社、1974年、日経経済図書文化賞)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社、1980年、サントリー学芸賞)、『土地の経済学』(日本経済新聞社、1989年、東京海上各務財団優秀図書賞、不動産学会賞)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社、1992年、吉野作造賞)、『1940年体制(新版)』(東洋経済新報社、2002年)、『日本経済は本当に復活したのか』(ダイヤモンド社、2006年)、『資本開国論』(ダイヤモンド社、2007年)、『モノづくり幻想が日本経済をダメにする』(ダイヤモンド社、2007年)、『円安バブル崩壊』(ダイヤモンド社、2008年)、『世界経済危機 日本の罪と罰』(ダイヤモンド社、2008年)、『未曾有の経済危機 克服の処方箋』(ダイヤモンド社、2009年)、『経済危機のルーツ』(東洋経済新報社、2010年)等多数。
◆ホームページ:http://www.noguchi.co.jp/


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