目次


日本を破滅から救うための経済学

再活性化に向けて、いまなすべきこと


[目次] [著者紹介]


表紙




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はじめに


第1章 「デフレが停滞の原因」という邪教から目覚めよう

1 デフレが諸悪の根源とされている

喧伝されている「デフレスパイラル」論
原因は需要サイドでなく、供給サイド
邪教から目覚める必要がある
第1章と第2章の概要
「デフレ」という言葉について

2 二〇〇九年型デフレからの脱却は不必要であり不可能

原油価格下落が望ましくないはずはない
メーカーの声に惑わされてはならない
相対価格の変化に対応するには、ビジネスモデルの転換が必要

3 デフレに関する三つの典型的誤解

誤った理解が日本の経済政策を誤らせた
デフレに関する典型的な誤解(1):企業利益が減少する
デフレに関する典型的な誤解(2):実質金利が上がる
デフレに関する典型的な誤解(3):消費者の買い控えが起きる
諸悪の根源は「流動性トラップ」
日本経済が流動性トラップに落ち込んでいる証拠
金融政策はデフレには無効

4 長期的な物価下落の実態は相対価格の変動

工業製品価格が低下してサービス価格は上昇
大きく変わった相対価格

5 最近の動向と今後の見通し

最近の物価下落は、耐久消費財とエネルギー価格の下落による
原油価格とドルの価値
原油価格は長期的には上昇する


第2章 いまこそ必要なデフレの経済学

1 デフレを考えるにはモデルが必要──総需要・総供給のモデル

右下がりの総需要曲線なら、物価下落が総需要を拡大する
総需要曲線は個別財の需要曲線と違う
右上がりの総供給曲線:物価上昇は賃金上昇を通じて総供給を増大させる
ミクロとマクロを混同してはならない
総需要曲線の背後にあるIS=LMモデル
現実の物価下落は総供給の変化が原因で起きており、総需要の変化は影響していない

2 日本でのみデフレが深刻なのはなぜか──総需要・総供給モデルによる日米経済の分析

日本経済に関する議論の見取り図
「財」と「サービス」を区別する必要
新興国の工業化が総供給曲線を下にシフトさせた
現実のデータとの照合
実質残高効果
総供給曲線の下方シフトの結果は日米で大きく違った

3 総需要・総供給モデルによる経済危機の分析

産出量が大きく減少したが物価は影響を受けなかった
経済危機に金融政策は無効。財政支出増が必要
日本経済を単純化したモデル:物価は海外要因で、産出量は需要要因で決まる
アメリカを単純化したモデル:デフレは経済を拡大させる


第3章 破滅への道を突き進む日本の財政

1 制御不能に陥った日本の財政

信じられない姿の二〇一〇年度予算
一九八〇年代に戻った日本の税収
製造業に立脚する「一九四〇年体制税制」は崩壊した
歳出構造が不変では、際限ない増税が必要
大量の国債発行継続は不可避
「一四〇〇兆円の個人金融資産があるから」は間違い
「水抜き」で消化してきた

2 国債発行はなぜ問題なのか

「国債は後世代に負担を転嫁する」は間違い
家計内の貸し借りでも問題は生じる
「国債の負担」は資本蓄積減少を通じて生じる
支出の内容が問題

3 最もあり得るのは「インフレ税」による財政赤字の解消

インフレは税である
インフレを起こすいくつかの方法
海外消化が必要になるとき
インフレは最も過酷な税
ギリシャの財政赤字問題
共通通貨はインフレ税を禁止する制度
インフレ税に対する制度的歯止めは強くない

4 税と国債は違うものなのか

リカード=バローの等価定理
増税による赤字縮小が望ましい理由
国債は負担感を希薄化させる

5 納税の痛みこそ政治と財政の原点

財政赤字が拡大するのは、納税者意識がないから
脱税に対して寛容すぎる日本社会
納税の痛みを感じる人が少なすぎる日本の税制


第4章 厚生年金は破綻する

1 「一〇〇年安心」年金とは

年金の最大の問題は制度の維持可能性
二〇〇四年の年金改革
「保険料水準固定方式」で決めているのは保険料であって給付ではない

2 あまりに現実離れした経済想定

高すぎる賃金上昇率の想定
賃金が伸びないと年金財政の基礎が揺らぐ
高すぎる運用利回り
もともと甘すぎた経済想定がさらに甘くなった

3 厚生年金は二〇三〇年頃に破綻する

保険料納付者が減って受給者が増える
マクロ経済スライドや保険料率引き上げでは対処できない
財政検証における偽りの対処
「被保険者が減るのに標準報酬総額は増える」とされている
厚生年金は二〇三〇年度までもたない
保険料収入について賃金上昇率の調整を行なう
給付費等についての物価スライドの調整
マクロ経済スライドが実行できないため、収支はさらに悪化
収支シミュレーション計算
加入者、受給者を基礎とするシミュレーション
シミュレーション結果:厚生年金は二〇三三年に破綻する

4 年金改革は一刻も早く着手する必要がある

デフレで所得代替率は上昇する
積立金が枯渇した年度から一律給付削減をした場合
自分で運用するほうが有利

5 厚生年金をいま清算することは、とてもできない

厚生年金を清算するには
現在の年金受給者に関する清算
現在の保険料支払い者に関する清算
清算には約一二五二兆円不足
財政赤字にカウントすべき

6 非正規雇用の年金難民化がもたらす年金の危機

非正規雇用の増加
増加した雇用者の一部しか厚生年金に加入しなかった
国民年金に加入した非正規雇用者は保険料を払っているか?
収支をさらに悪化させる要因
公的年金の問題は日航企業年金と同じ


第5章 消費税増税による財政再建は可能か

1 消費税率引き上げ前にインボイスが必要

三〇%近い税率が必要
インボイスがないと不都合な事態が生じる
インボイスなしでは生活必需財を非課税にできない

2 福祉目的税は議会の自殺行為

無意味かさもなくば危険
制約をつけなければ無意味
歳出のチェックが利かなくなり、自動増税が行なわれる
自動増税を認めれば、議会の存在意義はない

3 全額税方式という欺瞞

保険料を払った人と払わなかった人の公平確保
所得制限が必要だが難しい
保険料を徴収できないから税にする?
企業が雇用主負担を避けたい
税でまかなうべき対象は他にいくらもある

4 消費税増税では財政再建できない?

消費税を増税しても既発債残高は残る
増税による場合国債残高は変わらない
消費税増税では名目金利が上昇する


第6章 為替レートは何によって変動するか

1 円高は国難か

日銀に量的緩和拡大を強いた円高
政治に翻弄される為替・金融政策
民主党は為替レートに対する考え方を明確にすべきだ
民主党政権誕生と為替レート
実質実効レートは、格別の円高にはなっていなかった
実質実効レートで長期的に見れば現在はまだ円安

2 二〇〇七年までの異常な円安

現実の円ドル・レートは購買力平価より大幅に円安だった
日本車が売れたのは実質で円安になったから
円キャリー取引が発生した理由

3 経常収支が為替レートを決めるわけではない

事前的要因と事後的要因
実需原則の時代には経常収支や基礎収支が為替レートを決めた
現代の世界では資本移動が重要な役割を果たす
経常収支変化のウェイトは小さい
国際的な資本取引から取り残されている日本

4 資本移動が為替レートを決める

為替レートを決めるのは何か
円キャリーと解釈できる動きが為替レートに大きな影響を与えている

5 投機的資本移動と為替レートの分析

二〇〇〇年以降の円ドル・レートの推移
「その他投資」および「誤差脱漏」と名目円ドル・レートの強い相関
実効為替レートでも「その他投資」「誤差脱漏」との相関が見られる

6 円キャリー取引の正体

「その他投資」「誤差脱漏」の中身は何なのか?
BISによるキャリー取引の推計
現実的・理論的インプリケーション
金利差の動向:欧米諸国で長期金利が上昇したが、かつてより低い


第7章 日本が進むべきは高度知識産業

1 いまこそ日本経済を変えるチャンス

新しいことを始めるチャンス
なぜいまがチャンスなのか
脱工業化国が豊かになっている
未来のリーディング・インダストリを育成する

2 アメリカにおける高度知識産業

アメリカが脱工業化した過程
高報酬産業は知識集約産業
知識産業では自営業者の比率が高い

3 金融立国の前に金融貧国から脱却を

資産大国になった日本
債務国なのに所得収支が黒字のアメリカ、イギリス
サラリーマン的な投資しかしていない日本
金融立国にはまず教育が必要

4 教育こそ最も重要な成長戦略

教育は閑却されている
日本が遅れているのはプロフェッショナル・スクール

5 激減する日本の留学生と韓国の教育フィーバー

アメリカ一流大学で日本人留学生が激減
韓国の異常な留学熱

6 日本を活性化する手段は人材開国

海洋国家イギリスに学ぼう
日本で進まない「人」のグローバリゼーション
「場」を提供するという考え


図表目次

索引



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著者

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。
〈主要著書〉
『情報の経済理論』(東洋経済新報社、1974年、日経経済図書文化賞)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社、1980年、サントリー学芸賞)、『土地の経済学』(日本経済新聞社、1989年、東京海上各務財団優秀図書賞、不動産学会賞)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社、1992年、吉野作造賞)、『1940年体制(新版)』(東洋経済新報社、2002年)、『日本経済は本当に復活したのか』(ダイヤモンド社、2006年)、『資本開国論』(ダイヤモンド社、2007年)、『モノづくり幻想が日本経済をダメにする』(ダイヤモンド社、2007年)、『円安バブル崩壊』(ダイヤモンド社、2008年)、『世界経済危機 日本の罪と罰』(ダイヤモンド社、2008年)、『未曾有の経済危機 克服の処方箋』(ダイヤモンド社、2009年)、『世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか』(ダイヤモンド社、2010年)、『経済危機のルーツ』(東洋経済新報社、2010年)等多数。
◆ホームページ:http://www.noguchi.co.jp/


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