目次


奇蹟のブランド「いいちこ」

パワーブランドの本質


[目次] [著者紹介]


表紙




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はじめに

プロローグ 「宇佐」には日本一が三つある
 —田舎企業がなぜナンバーワンになったのか—

  宇佐八幡、双葉山、そして『いいちこ』
  神の郷「宇佐」が導いた巡り合い
  場所の生命意志の作用か?


第1章 日本一の“酒”となった『いいちこ』

 共同瓶詰めから始まった三和酒類

  昭和三三年三社の共同化からスタート
  いくつもの試行錯誤を繰り返しながら
  新たな挑戦のときの始まり

 『いいちこ』の誕生

  二〇年の苦闘の末に
  ある日、奇跡が起きた!?
  ブランド名を一般公募、方言の“いいちこ”の誕生

 抜群の飲みやすさが焼酎の世界を変えた

  東京進出を目指すものの
  飲酒の習慣を変えた『いいちこ』
  ウイスキーを抜き、蒸留酒のトップブランドになる

 『いいちこ』の転換を誘導した一人のクリエーター

  一枚のポスターから始まった『いいちこ』の世界づくり
  ファンを育て口コミで広げる戦略
  純粋無垢な酒だから自由なイメージづくりができた

 焼酎ブームが去っても生き残るために

  ユーザーの期待に応えることが生きる道
  広告は飲んでいる人のためにある
  絶対に嘘をつかないということ


第2章 清酒を抜いて日本人の国民酒となった本格焼酎

 アルコール離れが進むなか、焼酎だけが伸びている

  世界的に酒文化が衰退している現代
  関東人には未知の酒だった“焼酎”
  多元的な酒としての本格焼酎

 九州の“地酒”がなぜ日本全土を席巻したのか

  泡盛から始まった本格焼酎
  世界でも例を見ない蒸留酒
  伝統的でいて新しい商品性

 日本にしかない独自の発酵技術の結晶

  並行複発酵という独自の製造法
  麹と酵母——二つの微生物が織り成す世界
  素朴な単式蒸留の採用

 爽快な酔い心地と健康性

  焼酎は悪酔いしない?
  抗血栓作用があるといわれる
  〈手づくり感〉が醸成する安心性

 芋焼酎ブームのなかで『いいちこ』がトップでありつづける理由

  麦焼酎がなぜナンバーワン・カテゴリーになったのか
  麦焼酎の大衆化をもたらした技術革新
  徹底したプライス・ベネフィットの追求


第3章 単なる焼酎ではない独自の“酒”

 『いいちこ』は焼酎だから飲まれているのではない

  ブランドとカテゴリーの相互関係
  都会人の自己変革の友として
  『いいちこ』は時代を超える!?

 『いいちこ』は多くのユーザーに支えられている

  いまもレギュラーが九〇%を占める
  一年に一〇〇本以上飲むヘビーユーザーの存在
  『いいちこ』の〈大衆性〉の本質

 人々は『いいちこ』の世界を飲んでいるのではないか

  何が『いいちこ』の魅力の源泉にあるのか
  懐かしいが未知の世界
  酒を飲むというアフォーダンスの誘導

 『いいちこ』という〈場〉をつくり、広げていく

  宇佐という〈場所〉の力を引き出す
  日本型テロワールの原型を求めて
  『いいちこ』という“使場”の増殖

 『いいちこ』に見るヒット商品形成のメカニズム

  ヒット商品は「使場」が生む
  文明と文化の相互作用としての市場
  ユーザーの気持ちのなかに入り込む


第4章 高質なブランドイメージはどうつくられたか

 河北秀也との出会いが『いいちこ』を変えた

  いままでの広告界の常識を超えて
  「広告写真」にならないようにしよう
  デザインを広告にする!?

 『いいちこ』が一貫して訴えている世界とは

  〈日本の原風景〉を求めて世界へ旅立つ
  ヨーロッパにはなぜか日本的な風景がある
  持続するイメージこそ大切

 用意周到なメディア戦略

  一年間に一本のテレビCM
  新聞では『いいちこ』の本質の裏づけを示す
  「パーソン」と「スーパー」に見るハイクリエイティブ戦略

 『いいちこ』と“iichiko”の相互作用

  “いいちこ”をいかにデザインするか
  レギュラーと“iichiko”アイテムの相関性
  ありきたりの“CIブーム”を超えて”

 デザイン・アーキテクト——河北秀也の本質

  「共感覚者」=河北秀也
  河北秀也は「その日」を感じていた?
  文化技術としてのデザイン


第5章 おいしさは何に由来するか

 河北秀也の提示する世界をどう実現するか

  イメージを裏切らないための徹底した努力
  いまも日々進化する『いいちこ』
  続けられる新しい商品性の探究

 麦と水——そして麹と酵母がつくる絶妙のバランス

  宇佐の地の恵み——水と酵母
  原料の麦に徹底的にこだわる
  すべてはレギュラーを強くするために

 『いいちこ』のおいしさの本質とは何か

  「おいしい」という感覚はどう生まれるか
  ユーザーは『いいちこ』の味をどう感じているのか
  『いいちこ』のおいしさをどう保証するか

 〈酒の杜〉で続けられる不断の努力

  〈酒の杜〉の存在価値
  自然の恵みを生活の素材に転換する
  焼酎はまだまだ進化する?

 『いいちこ』は世界に通用する“酒”になるか

  海外でも飲まれはじめた『いいちこ』
  『いいちこ』の商品性は海外で受け入れられるか
  新たなグローカリズムの開拓を


第6章 マーケティング戦略の秘密

 焼酎ブームを超えて伸びつづけるには

  『いいちこ』のユーザー像の把握
  評判の自己組織化による市場形成
  トレンドを超えるのは顧客の組織化次第

 『いいちこ』の営業体制

  三〇人の営業マンで全国をカバーする
  日酒販という格好のパートナーの存在
  物流ネットワークの整備

 無謀な拡大主義を採らないことの意味

  いまだに東京支社も営業所もない
  河北秀也は宣伝部長にしてマーケティング本部長でもある
  効率より信頼性を重視

 『いいちこ』の強さはどこから来るのか

  価格は常に安定し、供給は途切れない
  いまもレギュラーが九〇%という意味
  ユーザーベネフィットの徹底的保証

 分相応のマーケティング体制はなぜ可能か

  もう一つの“三和”体制として
  すべては河北秀也のイメージ戦略を核として
  マーケティングに王道はない


第7章 エクセレントカンパニーの条件

 いまも毎朝の全員掃除から始まる会社

  「おかげさまで」を身上に
  社員全員の顔と名前を知っている
  大企業病を未然に防ぐ

 『季刊iichiko』と“iichiko二一世紀委員会”の役割

  三和酒類の保証装置としての二一世紀委員会
  文化資本戦略の核としての『季刊iichiko』
  三和酒類が文化的企業でありつづけるために

 三和酒類が『いいちこ』から脱皮する日は来るか?

  焼酎かすの再利用から始まった新事業
  大麦発酵研究所による健康食品の事業化
  技術力の強化による新市場の開拓

 新たな三和酒類像への模索

  このまま伸びつづけることができるか
  『いいちこ』に危機はないのか?
  三和酒類の強みと弱み

 常に“志”を持つ企業でありつづけるために

  四家の〈協働経営〉の意味
  大分という〈場所〉に賭ける
  多くの中小企業の目指す生き方がここに眠っている


第8章 究極のブランドとしての『いいちこ』

 ブランドパワーの構造

  ポピュラリティとロイヤリティが並立する稀有なブランド
  裾野は広く、イメージが高い秘密
  ブランドアクティビティを支える時間の厚み

 ブランドアイデンティティの核にあるもの

  独自のブランドアイデンティティの特殊性
  世界の普遍性を透視する原像性
  『いいちこ』のブランドアイデンティティの底辺

 象徴資本としてのブランド

  いままでのブランドマネジメントの本質的陥穽
  ブランドは文化性を内包しなければならない
  ブランドの〈ホスピタリティ性〉が鍵を握る

 生きつづけるブランドの要件

  ブランドとは「心のなかの記憶」である
  『いいちこ』のクオリアが感情記憶を呼び起こす
  ブランドの守護神=河北秀也


エピローグ 世界に一つだけの“酒”を目指して
 —日本のマーケティングは『いいちこ』に何を学ぶべきか—

  フィリップ・コトラー『マーケティング10の大罪』の功罪
  市場拡大より一人の顧客を大切にする
  ユーザーの信頼こそ最大の企業資産

あとがき



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著者紹介

平林千春(ひらばやし ちはる)
1947年長野県生まれ。法政大学社会学部中退後、雑誌編集長、フリージャーナリストを経て、1978年(株)コミュニケーションシステム研究所を設立。代表取締役に就任、今日にいたる。2005年4月より東北芸術工科大学(デザイン工学部)教授を兼ねる。日本ビジネス作家協会理事長、ソーシャルマーケティング推進協議会副代表、マーケティング人類学研究会主宰。主要著書には『365日のオンリーワンマーケティング』『コラボレーション・マーケティング』『シャープの液晶革命』『ビール戦争—成熟市場突破のマーケティング』(以上ダイヤモンド社)、『21世紀型ヒット商品の条件』『実践 ブランド・マネジメント戦略』(以上実務教育出版)、『ヒトはなぜその商品を選ぶのか』(日本実業出版社)、『花王 強さの秘密』(共著/実業之日本社)などがある。


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