ブックタイトル【新版】グロービスMBAリーダーシップ

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概要

【新版】グロービスMBAリーダーシップ

10が会社にいると、ピリッとした空気が社内に広がっていた。「いやいや、俺はああはなれない」。浅川は頭を振って祖父の顔を消した。 では、最も身近なリーダー、木村課長はどうだろうか。木村は非常にクレバーなタイプだ。ソフトで人当たりが良いうえにずば抜けた思考力と交渉力を持ち、重要なクライアント企業に優れた提案をしては、次々と大口案件を受注してきた。一手も二手も先を読むその先見性には部長や役員たちも一目置くほどで、最短で課長に昇進した。上の信認が厚く、来年にはジョイントベンチャー先の経営陣に入るのではと噂されている。浅川はまたため息をついた。「どう逆立ちしたって、木村課長のようにはなれないよな」 わが身を振り返るほどに、祖父や木村課長のようなリーダーとしての適性は、自分にはないように思われてくる。こんな自分が10人の部下を束ねて、経営の再建を図る重要な部門を動かすなんて、本当にできるのだろうか……。理論 優れたリーダーとはどんな人物だろうか、リーダー以外の人たちと何が違うのか。それを考えるときに我々がまず着目するのは、優れたリーダーはどのような特性や資質を持つのかという点である。◆リーダー研究の主流だった特性理論 古来、人々を率いる人物の典型例として挙げられたのは、国家や領土を治める君主や統治者であった。たとえば、孔子を頂点に戴く儒教の世界では、堯(ぎょう)や舜(しゅん)といった伝説上の君主を理想のリーダー像とした。両者とも叡智に富み、優れた政治を行う一方で、民への仁愛に篤く、親孝行で、正義や礼を重んじ、人々の厚い信頼を得ていた。つまり、生まれながらにして徳性を備えた人物である。片や西洋では、プラトンがその著書『国家』の中で、「統治者たる者は善のイデアを理解できる哲人であるべき」と、やはりその徳性について述べている。また彼は、だれもが哲人王になれるわけではなく、あらゆる点で秀でている選び抜かれた人材こそが哲人王にふさわしいとも述べている。 一方で、リーダーたる者のあるべき姿について、徳性とは少し異なる側面からも考えられてきた。統治者に「英雄」という言葉を重ねて想起することも少なくないだろう。たとえば、ヨーロッパから小アジア、北アフリカまでを一代で統治したアレクサンダー大王はどうか。アリストテレスを家庭教師に育った彼は、高い知性を持ち、自ら最前線