ブックタイトルタオを生きる

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概要

タオを生きる

4私は自分の考えを探求することで、あるがままの現実に異議を唱えるのはまともではないということがわかりました。今、起きていること以外のことが起きてほしいとはもう思いません。たとえば、私の九〇歳になる母は、すい臓癌で死を目前にしていました。私は母の面倒を見、料理や掃除をしました。そばで眠り、一日に二三時間、母のマンションで過ごす日々が一ヶ月(私の夫が毎朝、散歩に連れ出してくれるのを除いて)。母の息づかいが私の命の鼓動であるかのような、親密な関係でした。私は母をお風呂に入れ、体のデリケートな部分までも洗い、薬を飲ませました。とてもありがたい気持ちでいっぱいでした。最後の数日を眠ったり、テレビを見たり、話したり、素晴らしい鎮痛剤を投与されながら過ごしている母の姿は、私でもあります。母の体の美しさと複雑さに驚嘆します。それは私の体でもあります。母の最期の日。ベッドの脇に座っていると、母の呼吸が変化し、あと数分の命であることを私は悟りました。そして再び変化が起き、目と目が合ってまもなく、母は逝きました。私は、母の意識がなくなった目の中をさらにのぞき込みます。変化が起きるのを待っていました。母の目が私に死を見せてくれるのを。けれども何も変化しません。彼女の存在感は、これまでと変わらなかったのです。私は、母についての自分のストーリーを愛します。母はストーリーとして以外に、存在し得るでしょうか?ある時、男が私のお腹に拳銃を当て、撃鉄を起こし、「殺すぞ」と言ったことがあります。