企業価値評価 第5版 【上】

企業価値評価 第5版 【上】 page 2/10

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4 第Ⅰ部 原理編 ここで、市場経済のあり方にまつわる誤解を1つ解いておきたい。2007年の米国の住宅バブル崩壊に端を発する経済危機を二度と引き起こさないためには、市場経済に関する考え方を根本的に改めるべき....

4 第Ⅰ部 原理編 ここで、市場経済のあり方にまつわる誤解を1つ解いておきたい。2007年の米国の住宅バブル崩壊に端を発する経済危機を二度と引き起こさないためには、市場経済に関する考え方を根本的に改めるべきだ、と主張する研究者がいる。企業や投資家の活動に対し新たな規制や新たな経済学説を唱える声もある。しかしながら筆者は、新たな規制も新たな理論も、バブルや経済危機の再発防止策にはならないと考える。過去のバブルや経済危機は、投資によっていかに企業価値を創造するかや、どのように企業価値を評価するべきか、あるいはその両方を、企業や投資家や政府が忘れたときに発生している。どの投資が企業価値を生み出すのかについて誤解と混乱が生じ、ついには、企業価値を損なうような投資がなされ、それが経済危機の引き金を引いたのである。 企業価値の創造や、その評価の理論と経験に裏打ちされた知見を確立しておくことは、将来のバブルや経済危機を防止するためにも重要である。このため、本書では、初版からこの第5版まで一貫して、価値創造の基本原則をベースとしている。 価値創造の基本原則とは、「投資家から資本(株主資本および有利子負債)を調達し、資本コストを超えるリターンで将来キャッシュフローを生み出す場合に価値が創造される」というものだ。企業がより速く成長するほど、より多くの資本をより高い収益率で活用するほど、価値創造も大きくなる。つまり、価値創造の大きさは、企業の成長率と、ROIC(投下資産利益率:ReturnOn Invested Capital)が資本コストをどれだけ上回るかの組み合わせによって決まる。そして、企業が高い成長率と高いROICを維持できるのは、競争優位が明確に確立されている場合だ。このように、企業戦略にとって重要な競争優位性と、価値創造の基本原則は密接な関係にある。 また、価値創造の基本原則から、企業価値不変の法則が導き出される。企業価値不変の法則とは「キャッシュフローが変わらなければ企業価値も変わらない」というものだ1。たとえば、企業が増資して有利子負債を減らしたり、社債を発行して自社株買いを行っても、キャッシュフローは変わらない。こ                1 企業のリスク・プロフィールが変わらないことを前提とする。2 ただし、第23章(下巻)で議論するように、有利子負債の節税効果(タックス・シールド)によりキャッシュフローが増加する場合もある。