企業価値評価 第5版 【上】

企業価値評価 第5版 【上】 page 4/10

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6 第Ⅰ部 原理編したとき、同社の売上は8500万ドルであったのに対し市場価値は60億ドルにもなった。このネットスケープの歴史に残る上場の結果、インターネットによってビジネスや価値創造の方法が変わるという認識....

6 第Ⅰ部 原理編したとき、同社の売上は8500万ドルであったのに対し市場価値は60億ドルにもなった。このネットスケープの歴史に残る上場の結果、インターネットによってビジネスや価値創造の方法が変わるという認識が定着した。そして、インターネット関連企業の上場ラッシュが始まった。1995~2000年の間に欧米で4700社が上場し、その多くは10億ドルを超える市場価値がついた。 確かに、アマゾン、イーベイ、ヤフー等は多額の利益を上げ、高額の価値を生み出した。しかし、いかなる革新的なビジネスモデルも、いずれは競合に模倣される。そして特別な利益や価値を生み出せなくなる。ネットスケープも例外ではない。株式市場におけるインターネット関連企業の初期の成功は、多くの場合、華やかな誇大広告のごとき束の間の勝利にすぎなかった。 インターネット革命の熱狂のなかで、経営者や投資家は経済の基本的な原則すら忘れ去ってしまった。代わりに登場したのが「規模の収益逓増効果」(「ネットワーク効果」または「需要サイドの規模の経済」としても知られている)で、これはカリフォルニア大学バークレー校のカール・シャピロとハル・バリアンが「ネットワーク経済の法則」で提唱してから広まった4。「規模の収益逓増効果」の基本的な考えは、企業の成長とともに、顧客にとっての商品やサービスの価値も大きくなり、より大きな利幅と資本収益率を得られるようになるというものであった。競争の結果、収益は通常のレベルにまで低下するのが一般的だが、一部の産業では、マーケット・リーダーの生産コストが低下し続けるため、競争が起こらない。よって、勝者の一人勝ち(Winnertakes all.)となる。 マイクロソフト・オフィスがよい例だ。ユーザーが増えるにつれ、新規ユーザーにとっての価値も大きくなる。競合のソフトウェアを購入しても、文書やスプレッドシートの互換性が限られているからだ。マイクロソフトの競争優位が定着した結果、2009年にはマイクロソフト・オフィスの利幅率は60%を超え、営業利益は約120億ドルに達した。 マイクロソフトの例が示すとおり、「規模の収益逓増効果」それ自体は間違っていない。しかし、この法則がインターネットに関係するすべての商品やサービスに当てはまる、と考えたのは誤りだった。誤解は、競合よりも速                4 C. Shapiro and H. Varian, Information Rules:A Strategic Guide to the Network Economy( Boston:Harvard Business School Press, 1999).