企業価値評価 第5版 【上】

企業価値評価 第5版 【上】 page 5/10

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第1章 なぜ、企業価値か? 7く成長しさえすれば巨額の利益が約束されている、と解釈されたところにあった。たとえば、携帯電話業界にも規模の収益逓増効果が当てはまると考えたアナリストがいた。しかし、利用者が....

第1章 なぜ、企業価値か? 7く成長しさえすれば巨額の利益が約束されている、と解釈されたところにあった。たとえば、携帯電話業界にも規模の収益逓増効果が当てはまると考えたアナリストがいた。しかし、利用者が携帯電話会社を簡単に乗り換えることができるため価格競争が起こり、ROICの当初見込み45%の達成は無理なことが明らかになった。 イノベーションの歴史が示すとおり、独占的なレベルのROICを上げるのは極めて難しい。しかし、このことを無視し、インターネット関連というだけで株式を推奨する人々がいた。そして、新しい経済法則に疑問を呈する人々には、頑迷なわからず屋というレッテルが貼られたのである。 最終的に、従来の経済原則が正しいと証明されたとき、インターネット関連企業の多くには、ある程度のROICをもたらすのに必要な競争優位性すらないことが明らかとなっていた。確かに、インターネットは経済に革命をもたらした。しかし、経済学、競争、価値創造の原則を書き換えるには至らなかったのである。金融危機 2007年以降の金融・経済危機の際に忘れ去られていたのは、企業価値不変の法則である。 ここで、米国の住宅バブル発生の仕組みについて説明しておきたい。まず、個人や投機家が住宅を購入する。住宅は流動資産ではなく、しばらくの間、保有し続けなければならない。そこで、住宅ローンが必要となる。ところが、住宅ローンの金利は最初の数年間は意図的に低く抑えられており、数年後に約定金利が急上昇し、同時に元金返済が始まる仕組みとなっている。買い手も銀行も、このままいけば、約定金利が上昇する時点で住宅ローンの支払いが不可能になるとわかっていた。しかし、借り手の収入が増えて住宅ローンの返済が可能となるか、住宅価格が上昇して別の銀行が住宅ローンをより低い金利でリファイナンスすると踏んでいたのだ。 銀行はこのような高リスクの住宅ローン債権を、長期の債券にパッケージして、住宅ローン担保証券として投資家に転売した。住宅ローン担保証券の流動性は低い。その一方、金融機関やヘッジファンドは、短期借り入れにより調達した資金で住宅ローン担保証券に投資する。こうして、金融機関やヘッジファンドへの貸し手も長期的なリスクを負うこととなった。