企業価値評価 第5版 【上】

企業価値評価 第5版 【上】 page 6/10

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8 第Ⅰ部 原理編 金利が上昇し、住宅ローンが返済されないことが明らかになると同時に、住宅市場は混乱に陥った。借り手側は、住宅ローン残高よりも住宅価格の方が低くなったため、ローンの返済も住宅の売却もでき....

8 第Ⅰ部 原理編 金利が上昇し、住宅ローンが返済されないことが明らかになると同時に、住宅市場は混乱に陥った。借り手側は、住宅ローン残高よりも住宅価格の方が低くなったため、ローンの返済も住宅の売却もできなくなった。このため、銀行は住宅ローンの借り換えを予定通り進められなくなった。そこで、住宅ローン担保証券の所有者は一斉に証券を売却しようとし、証券の価格が暴落した。そして、短期借り入れによって住宅ローン担保証券を所有していた大手金融機関は、その借り入れの借り換えができなくなった。 住宅ローン担保証券ビジネスの参加者は、2つの重大な誤りを犯していた。第1の誤りは、リスクが高い住宅ローンを証券化することによって、リスクが低減し、価値が増加したと考えられていたことである。これは企業価値不変の法則に反する。住宅ローンから得られるキャッシュフローは増加しないため、価値は増加しない。資産の証券化は、リスクを第三者に移転するにすぎず、リスクは低下しない。しかも、証券化の仕組みが複雑なため、だれがどのようなリスクを抱えているのかを正確に把握することが不可能となっていた。住宅ローン市場が崩壊したとき、金融機関はどの取引相手が巨大なリスクを抱えているかがわからなかった。このため、疑心暗鬼に陥り、ほとんどの取引を停止してしまった。こうして、信用収縮が起こり、実体経済に影響が拡大し、景気が後退したのである。 第2の誤りは、レバレッジによって価値が創造されると考えたことである。これも企業価値不変の法則に反する。レバレッジによってキャッシュフローが増加しない以上、価値が創造されることはない。多数の銀行が、流動性の低い資産に投資するために短期借り入れを行ったが、この借り入れは長期的な株主価値の増大をもたらさなかった。むしろ、株主にとってのリスクを高める結果となった。?金融危機と過度のレバレッジ 経済史家が指摘するように、レバレッジの濫用は金融危機を引き起こすことが多い。いつも決まったパターンだ。 まず、企業や銀行、投資家が、流動性の低い資産への長期的な投資のために短期借り入れを行う。そして、短期借り入れの返済時に、何らかの事情で、リファイナンスができなくなる。その結果、手元資金の少ない借り手は、資産の一部を切り売りしなければならなくなる。しかし、資産の流動性が乏し