企業価値評価 第5版 【上】

企業価値評価 第5版 【上】 page 7/10

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第1章 なぜ、企業価値か? 9いうえに一斉に投げ売りが起きるため、売却価格は債務返済の必要額に届かない。つまり、借り手に資産と債務のミスマッチが発生する。 過去30年間に、6回の金融危機が発生した。企業や....

第1章 なぜ、企業価値か? 9いうえに一斉に投げ売りが起きるため、売却価格は債務返済の必要額に届かない。つまり、借り手に資産と債務のミスマッチが発生する。 過去30年間に、6回の金融危機が発生した。企業や銀行が短期借り入れによって流動性の低い資産に投資したことが原因だ。米国では1980年代に貯蓄組合(S&L)が短期借り入れと預金によって大幅に業容を拡大した。その後、不動産に代表された投資の価値が債務に見合わないことが判明した。貯蓄組合は資金繰りに詰まり、1989年に米国政府は貯蓄組合業界を救済することとなった。1990年半ばに、成長著しい東アジア諸国(タイ、韓国、インドネシア等)では、米ドル建ての短期借り入れによって、流動性の低い産業用地や工場設備への長期投資が行われた。ところが、世界的に金利が上昇し、さらに東アジア諸国での過剰投資が明らかになると、債務の返済や借り換えが不可能となった。こうして経済危機が発生し、国内経済や外国人投資家がダメージを受けたのである。この他にも1998年のロシア債務危機やそれに伴うヘッジファンドのLTCM (Long Term Capital Management)の破綻も、過剰な短期借り入れによって引き起こされた。さらに、1990年代初頭の米国の商業不動産危機や、1990年から現在に至るまでの日本の金融危機も同様である。 確かにバブルの発生と崩壊は、非常な痛みを伴う。しかし、バブルの再発を防ぐために、競争規制や金融規制を変える必要はない。また、インターネットは購買行動やコミュニケーションのあり方を変えたものの、1990年代に流行した「ニュー・エコノミー」は実際には生まれなかった。現実はむしろ逆で、インターネットによって価格情報などが入手しやすくなり、古典的な意味での市場の競争原理が働きやすくなったといえよう。2007年以降の金融危機の結果、借り手の返済能力を超える住宅ローンやカードローンは禁止されることになるだろう。しかし、それ以上に重要なことは、経済危機の再来を避けるために、経済の基本原則を再認識することだ。もし投資家や借り手が、投資や債務を価値創造の基本原則に従って正しく評価するならば、資産価格はリスクを正しく反映したものとなろう。?金融危機と株式市場 株式市場は金融危機の間も、企業の本来価値を反映し続ける。しかし、一般にはそう認識されない。実際に、2007年以降の金融危機では、株式市場も批判にさらされた。