企業価値評価 第5版 【上】

企業価値評価 第5版 【上】 page 8/10

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10 第Ⅰ部 原理編 2008年10月のニューヨーク・タイムズ紙は社説で以下のように怒りをあらわにした。「株式市場の動きは非理性的極まりない。過去1カ月余りの間、バンク・オブ・アメリカの株価は26ドルまで落ち込....

10 第Ⅰ部 原理編 2008年10月のニューヨーク・タイムズ紙は社説で以下のように怒りをあらわにした。「株式市場の動きは非理性的極まりない。過去1カ月余りの間、バンク・オブ・アメリカの株価は26ドルまで落ち込み、37ドルにもち直したが、30ドルに下がり、38ドルまで回復し、20ドルまで落ち込み、26ドルまで上昇した後24ドルに下がった。バンク・オブ・アメリカにどのくらいの価値があるかについて、まるで手掛かりがないことは明らかだ5」。この例は、(株式市場が機能していないことの論拠としては不十分だが)少なくともクレジット・マーケットと株式市場の根本的な違いを示している。バンク・オブ・アメリカの株式は簡単に取引できるが、クレジット・マーケットは(国債市場は例外として)流動性が低い。経済危機が株式市場からではなくクレジット・マーケットから発生するのはこのためだ。 株式市場とクレジット・マーケットの機能の仕方は、まったく異なる。株式の流動性は極めて高い。その理由は2つある。第1に、株式の取引は証券取引所で秩序立って行われている。第2に、株式市場では、多数の売り手と買い手が比較的少数の銘柄を取引している。反対に、クレジット・マーケットは規模が小さいうえに流動性が低い。その理由として、まず、銘柄の多さが挙げられる。一企業が複数の社債を発行するうえ、債券デリバティブの数はさらに多い。しかも、これらは標準化されていない。さらに、債券のうち取引されていないものも多い。たとえば、銀行間のローンや、銀行からヘッジファンドに対するローンは、相対で取引され、第三者が売買することは難しい。このように流動性が低いため、だれもが取引に応じなかったり、価格が非合理なレベルまで下がってしまうなど、市場として機能不全に陥ることがある。 2007年以降の金融危機の間、確かに株式市場のボラティリティは高かったが、ほとんどの期間、株式市場は機能し続けた。ボラティリティが高かったのは、実体経済の先行に関する不透明感が原因である(ボラティリティについては第17章参照)。S&P500は、2008年1月~9月に1200~1400の範囲で推移した。その後、リーマン・ブラザーズが破綻し、米国政府がAIGを国有化すると、S&P500は800~900まで落ち込んだ。しかし、この落ち込みは、金融システムの不透明感や信用収縮、そして実体経済への影響を踏まえれば、驚く                5 Eduardo Porter,“ The Lion, the Bull and the Bears,” New York Times, October 17, 2008.