企業価値評価 第5版 【上】

企業価値評価 第5版 【上】 page 9/10

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第1章 なぜ、企業価値か? 11に値しない。さらに、投資家が株式投資のリスクが高まったと感じたことから、S&P500の30%低下は資本コストのわずか1%上昇と等しくなっていた6。 確かに、短期的には、株式市場が極端....

第1章 なぜ、企業価値か? 11に値しない。さらに、投資家が株式投資のリスクが高まったと感じたことから、S&P500の30%低下は資本コストのわずか1%上昇と等しくなっていた6。 確かに、短期的には、株式市場が極端な動きをみせた時期があった。2009年3月に、S&P500は800から700に落ち込んだが、間もなく800まで回復した。市場が底を打つのを投資家が待ち構えていたのは明らかだ。S&P500が700を割り込んだ瞬間に回復が始まった。その後も順調に上昇し、12月には1100に達している。筆者の分析では、同時期のS&P500の長期トレンド価値(株式の合理的な価値を反映したもの)は1100~1300の範囲であった。 振り返ってみると、株式市場の動きは非合理的とはいえない。取引は停止せず、価格も経済実態を反映した水準から大きく外れることはなかった。株式市場はうまく機能したといえよう。確かに、株式市場は経済危機を予見しなかった。しかし、そもそも株式市場とは、実体経済の悪化を予見するものではない7。2 長期的な価値創造の利点 企業の成功のものさしとして、株主価値とそれ以外(雇用、社会的責任、環境等)のどちらがより重要かは、これまで長く議論されてきた。英米では、企業の目的は株主価値の最大化という論が根強い。取締役は株主に選任され、株主の利益のために企業の成長に責任を負う。 英国以外の欧州では、企業の目的はやや広めに定義される傾向がある。企業のガバナンスや組織の仕組みと関連することが多い。たとえば、オランダやドイツでは、大企業の取締役は、事業継続の責任を負っている。そして、その責任を負う相手は、株主だけでなく、従業員や地域社会を含む、すべてのステークホルダーだ。同様の考え方が、他の欧州諸国のコーポレート・ガバナンスのあり方の基礎にある。また、アジアにおいては、創業者一族が取締役をコントロールし、企業の方向性を決定する傾向がある。                6 Richard Dobbs, Bin Jiang, and Timothy Koller, “Why the Crisis Hasn’t Shaken the Cost ofCapital,” McKinsey on Finance, no. 30( Winter 2009):26-30.7 Richard Dobbs and Timothy Koller, “The Crisis:Timing Strategic Moves,” McKinsey onFinance, no. 31( Spring 2009):1-5.