ブックタイトル研修開発入門

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概要

研修開発入門

第1章 研修開発とは何か? 19「組織の中核能力を維持するということ」は、具体的には、どういう意味でしょうか。例えば、今、仮に、独自の研磨技術を持ち、高い付加価値のある製品をつくっている製造メーカーがあるとしましょう。 この企業の有する研磨技術は、世代を超えて従業員に受け継がれてきたものであり、それを用いたさまざまな研磨機械なども開発しています。この技術は、海外からも高く評価され、さまざまな商品開発に役立てられています。このように企業に競争優位をもたらす中核能力(コアコンピタンス)は、一朝一夕で身につけられるものではありません。その習熟には長い時間がかかり、先輩の職人・技術者に若手が指導されることを通して、長期間かけて世代継承されていきます。かくして行われる人材育成とは、短期的な売り上げ増に直接貢献するわけではありませんが、中長期の視点に立った場合、欠かすことはできないものです。漢方とは、体調を整え、中長期の視点にとって服用されることが多いと思われますが、中核能力の継承もそれに似たところがあります。漢方を服用するがごとく、日々の体調変化にかかわらず飲用し、中長期の視点に立って健康な身体、すなわち「組織の健全性」を維持していくことが求められます。 また、組織が組織として「健康な身体を維持していくため」には、「優秀な人材を組織内に維持しておくこと」も必要になります。これに関しては、どのように考えればいいでしょうか。これは、若年層を中心にして近年、自身の能力・キャリアの開発や、エンプロイアビリティ(雇用可能性)についての意識が高まっていることに起因します。 周知の通り、1990年ポストバブル以降、日本の雇用制度は曲がり角を経験しました3 3。終身雇用を前提とした働き方は、次第に色褪せたものになり、長期的な視野に立ってひとつの企業で働くことが、本当に可能なのかどうか、という疑念が、主に若年層に広がっています。こうした将来の雇用に対する不安を背景に、現代の若い世代は、自分の能力を伸ばし、組織内外でも通用するキャ3 正社員をめぐる人事の専門的議論としては、下記の書籍が参考になります。今野 浩一郎(2012)『正社員消滅時代の人事改革──制約社員を戦力化する仕組みづくり』日本経済新聞社小倉一哉(2013)『正社員の研究』日本経済新聞出版社