ブックタイトル経営参謀

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概要

経営参謀

046「社長から、安部野さんに市場調査のコンサルティングを依頼してよいという許可をもらっています。今回もよろしくお願いします」安部野は不機嫌そうに腕を組んだ。「僕は、負け戦はしない主義だ」えっ? 安部野の一言に高山は、まさに眼が点になった。「このブランドの立て直しは、うまくいかないのですか?」安部野は無言でA3の5ミリ方眼のノートパッドを取り出した。「市場調査を行ってから商品を手配し、発注してから入荷するまでに何か月かかると思っているんだ。スーツに比べてレディースのほうが商品の納期が短いといっても、『ハニーディップ』の価格帯の商品は、ほとんどが中国やベトナムなどの海外生産のはずだ。市場調査には、準備を含めて早くても2か月、分析に1か月強。そして方向性を出してから企画を始めて、第一回目の商品が店頭に並ぶまでに最短でも2か月はかかるだろうに。そこまでで5か月だ。つまり最初の商品投入で成功しなければいけない。修正の時間の余裕がない、一発勝負になるということだ」安部野に言われて高山は蒼くなった。…その通りだ。高山が以前いたメンズスーツ業界では、在庫が万年過剰状態にあるのが常だったため、商品の手配を考える必要がなかった。「それも社内がきちっと機動的に動く前提での話だ。君はまだ、その会社に入ったばかりの新参者なのだろう? 社内の人心を掌握して、動かすことができているのか? まだ、できていないのじゃないのか」高山の頭の中は、真っ白になった。