ブックタイトルハゲタカ外伝 スパイラル

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概要

ハゲタカ外伝 スパイラル

22「頼む」と言ってすぐに、その程度でいいのかと思い直した。「通夜は明日か。明日の午後の予定は?」「変更可能なものばかりですが」「通夜に参列するよ。手配してもらえるかい」「かしこまりました」嫌な顔ひとつせずに、秘書は手配のために再び部屋を出て行った。在りし日の藤村登喜男の顔が、芝野の脳裏に浮かんだ。三葉銀行船場支店時代に世話になった、中小企業の社長だった。││ええか、芝野さん。世の中で一番大事なんはな、諦めんことや。どんだけカネに困っても諦めたら負けや。仕事がなかったら自分で創るねん。東大阪市にあった藤村の会社は、本来なら船場支店の営業圏外だったが、ひょんな縁で意気投合してからは、どっぷりとつきあうことになった。なにわのエジソンを自称する藤村は、大阪大学工学部で博士課程まで進みながら、教授と喧けん嘩かして研究室を飛び出し町工場を興している。持ち前の器用さと柔軟な発想を武器に、電気電子機器関係で数々の発明品を創り出し、時に海外からも依頼があるという〝天才?だった。藤村率いる「なにわのエジソン社」を初めて訪れた日のことを、芝野は今でも鮮明に覚えている。薄汚れた五〇坪ほどの工場だったが、見たこともない工作機械があちこちに置かれ、ユニークな製品と試作品が山をなしていた。藤村が当時取り組んでいたのは、寝たきりの障害者が自立歩行できる補助器の開発だった。大