ブックタイトルハゲタカ外伝 スパイラル

ページ
5/10

このページは ハゲタカ外伝 スパイラル の電子ブックに掲載されている5ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

ハゲタカ外伝 スパイラル

23 第一章 発起の時阪大学人間工学科の助教授と共同で自立歩行のメカニズムを研究し、実際に伝い歩きができるレベルまでは開発が進んでいた。ほかにも、昆虫の羽の動きをヒントにして作った垂直上昇するラジコン機や、ファックスの画像をより鮮明にプリントするノズルの開発なども手掛けていた。工場に溢れていた試作品の中で、製品化され採算が取れたのは一〇に一つもなかった。それでも、従業員五人のほか藤村夫人が忙しく働き、年に二度の社員旅行ができるほどには利益を上げていた。藤村は人を惹きつける〝天才?でもあり、そのせいで芝野は暇さえあれば、なにわのエジソン社に通った。そんな親交のおかげで初めてバンカーとしてリスクを取って融資し、ひとつの製品が誕生するまでの全過程に立ち会うという貴重な経験をした。融資を依頼されたのは、車のスライドドアが安全かつ滑らかに自動開閉する駆動制御装置の開発だった。もともと自立歩行器の開発のために考案したシステムをスライドドアに応用したものだ。工作や機械系の知識がない芝野は、試作品をテストする際のアシスタント役とコスト管理を主に担当した。頑固一徹に見えた藤村だが、素人である芝野の意見にも熱心に耳を傾け、製品の改良を続けた。顧客から突きつけられる無理難題を克服して製品を完成させた時には、芝野は柄にもなく号泣した。銀行員は優良な融資先を見つけて、カネを押しつけるようにして営業すればいいと言い切る先輩も少なくなかったが、融資先の事業を分析したうえで将来の可能性に対して投資する意味を、芝野はここで学んだ。