ブックタイトルハゲタカ外伝 スパイラル

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概要

ハゲタカ外伝 スパイラル

24藤村と会わなければ、事ターンアラウンド・マネージャー業再生家にはなっていなかったかもしれない。文字通り恩人とも言える藤村と最後に会ったのはいつだったか。確か、社名変更したと連絡をもらって駆けつけた時だ。芝野が「なにわのエジソン社って気に入ってたんですけど」と残念そうに言うと、「ちょっと偉そうやなって、ようやく気づいてん」と藤村は縮れた髪を?かいた。〝博士?の言葉とは思えなかった。実際、しばらく会わないうちにやけに老け込んでいたし、洒しゃ落れ者ものとは思えない皺しわだらけのスーツに染みの付いたネクタイも「らしく」なかった。││でも、マジテックもええやろ。「独創的な発想と技術力で、魔法のような発明を生み出す」という思いから生まれた名前らしい。とはいえ、なにわのエジソン社といういかにも藤村らしい社名にも芝野は愛着があった。天才は、一%の閃きと九九%の汗でできているというエジソンの言の藤村流解釈、すなわち一%の閃きがなければ、九九%の努力は無駄になる。才能なき者は、無駄な努力をするな││。傲慢とも言えるその解釈こそ、そのまま藤村の生き様だった。それを象徴する社名が消えるのは寂しかったが、藤村なりの考えがあってのことだろう、と深くは詮索しなかった。あの時、もうひとつ気になったのは、バブル崩壊の波をかぶって藤村の会社の業績が厳しくなったことだ。それでも藤村は「最後は、自分の力を信じたもんが勝つ。せやからバブル崩壊でちょっとぐらいへこんでも心配なんぞしてへんよ。もういっぺん輝いてみせる」と自信たっぷりの笑みを浮かべていた。当時、不良債権処理を任されて腐っていた芝野は、藤村のその意気に励まされた。