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概要

人材育成ハンドブック

63│成人の学習におけるレディネスの具体例 職種や業種にもよるが、特定の資格や免許を保持していないと業務そのものが行なえない特殊な仕事の場合、資格・免許取得のための学びへの意識は必然的に高くなる。また「仕事を効率的に進める方法がわからず業績が上がらない」「部下との信頼関係の構築方法がわからず職場で孤立しがちである」といった悩みを強く持っている場合は、これらの問題を解決してくれる書籍や研修へ積極的に関心を寄せることになる。 ハヴィガースト(1961)は、成人期を「成人初期」「中年期」「高齢期」に分け、それぞれの期間において異なる学習へのレディネスがあると説明している。具体的には、成人初期は就職し仕事の基礎的なスキルを身につける時期のため、さまざまな企業の情報を収集する、もしくは基本的なビジネス上の慣習を知ることに強いレディネスを持つ。中年期は監督者や管理者になる時期のため、マネジメントの知識を学ばなければいけないという意識が強い。また、高齢期は一般的にリタイア後の生活が心配事になる時期のため、老後の暮らし方についての学習意欲が高い状態になる。4│レディネスを活用した研修の設計 レディネスを高めるためには、学習内容が学習者の仕事や課題に関連していることが有益であり、レディネスを活用し、研修の効果を高めるための教育手法としてケラーのARCSモデルを紹介する。 ARCSとは、注意(Attention)、関連性(Relevance)、自信(Confi dence)、満足(Satisfaction)の頭文字をとったものである。学習者にとって興味や関心の高いテーマを選択し、学習者が努力をして到達できるレベルに課題を設定し、満足度を維持することで学習の効果を上げる枠組みである。注意(Attention) 受講者の興味や関心を引くようなテーマ・題材を選び、受講者の注意を引きつける関連性(Relevance) 自分の業務に関連のある内容や課題の解決に結びつくような内容を取り上げ、受講者に当事者意識を持たせる自信(Confi dence) 十分努力すれば達成が見込める程度にレベルを設定し、受講者を研修に前向きに取り組ませる満足(Satisfaction) 有用なインプットを与えるなどにより、研修の満足度を上げ、再度同様の研修を受けたいと思わせる