ブックタイトル週刊ダイヤモンド16年8月13日・20日合併特大号

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週刊ダイヤモンド16年8月13日・20日合併特大号

特集「実家」の大問題た」と言うのは、都内に住む50代の大手不動産会社幹部だ。 男性の両親がバブル時代に約1・5億円で購入した、横浜市郊外の大手デベロッパーの分譲住宅。それを5000万円で売却しようとしたが、地元の仲介業者に「そんな値段じゃ誰も買いませんよ」と一笑に付されたという。「3000万円で売りに出したが売れず、2000万円に下げても駄目。親が他界すれば、空き家にするしかない」と、不動産のプロであるはずの男性は自嘲する。「あと20 年を経ずして、住宅の3軒に1軒が空き家になる」││。 そんな衝撃的な予測を今年6月、野村総合研究所(NRI)が発表した。総務省が5年に1度実施する「住宅・土地統計調査」。直近の13年の調査で、総住宅数に占める空き家率は13・5%。だが、NRIによれば、それが人口減少に伴い、23年に20%を突破し、33年には30%を超えるという。 これがどういう事態をもたらすのか、想像してほしい。たとえ、自宅や実家が空き家にならずとも、両隣のいずれか0000000が、空き家になるということだ。 一戸建てであれば、空き家となった隣家の樹木がわが家まで生い茂り、害虫や害獣が発生し、倒壊や火災の危険性に加え、周囲の不動産価格の下落といった間接的な被害がもたらされる。「言葉は悪いが、空き家は街のシロアリのような存在」と言うのは、東京特別区のある区幹部。「空き家問題は、首都圏の郊外から東京23区内にまで及んでいる。JR山手線内など本当の都心以外は、今後、この問題に苦しめられる」。 そんな自治体の声を背景に、国がついに動いた。昨年5月に施行された「空き家対策特別措置法(空き家特措法)」だ。 従来は、倒壊寸前の空き家であろうが、家が立ってさえいれば、固定資産税や都市計画税が大きく減免されてきた。 ところが、今年度から「倒壊の危険性」や「衛生上有害」などの理由により「特定空き家」と認定されれば、物件の所有者に対し、撤去などを命令することができる。従わなければ、行政が強制的に家屋を解体し、費用を所有者に請求する「代執行」も可能となった。 これまで遠く離れた過疎地域のものと思われていた空き家問題。それが加速度的に都市部にも広がり、公権力が私有財産に手を入れるべく大きくかじを切ったことで、日本人の誰もが避けては通れない「大空き家時代」に突入した。29 週刊ダイヤモンド 2016/08/13・20 合併号