ブックタイトル週刊ダイヤモンド16年9月17日号

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週刊ダイヤモンド16年9月17日号

27 週刊ダイヤモンド 2016/09/17特集皇室1968 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 2000 02 04 06 08 10 12 14年506070403020100 020406080100120140(万人) 皇居東御苑入園者数 (%)増加を続けている出所:宮内庁入園者数(左目盛)外国人の割合(右目盛)するのが狙いだったとみられる。裏を返せば、それだけ皇室は国民から慕われていて、共産党ですら、今までのような姿勢では、選挙の際に支持されないと判断したということだ。 もちろん、明治維新から第2次世界大戦までも、天皇は国民から敬われていた。 ただし、国民が天皇の肉声を聞くことはほとんどなかったし、明治以降の国家の中心に天皇を置くという政策と教育により、半ば強制されたものだったともいえる。 しかし、今は誰からも強制されることなく、国民の多くは天皇陛下を自然に受け止めている。 例えば、こんな数字がある。NHKが73年から5年置きにまとめている「現代日本人の意識構造」という調査がある。対象は全国の16歳以上の男女約5000人だ。 その調査では、73年に天皇陛下に対して「尊敬の念を持っている」が33・3%で、「好感を持っている」は20・3%だった。ところが、88年には「尊敬」が27・5%で「好感」が22・1%と、両者の合計はやや減少し、さらに注目なのが「無感情」が46・5%と圧倒的に多かったことだ。 それが、13年の最新の調査では、「尊敬」が34・2%、「好感」が35・3%と上昇し、「無感情」は28・4%と少ない。ちなみに、「反感を持っている」は88年まで2%台で、次回以降は1%台が多く、13年はわずか0・5%だ。 天皇、皇后両陛下が、全国各地を回り、弱者に寄り添ってきたことが、こうした国民感情の変化に貢献したことは疑いようがない。 皇室への好感は別の数字としても表れている。皇居の東側に位置する皇居東御苑。68年から公開されているこの庭園の入園者数は増加し続けている。東日本大震災などの影響を受け減少した時期もあるが、総数も外国人の割合も伸びている(上図参照)。 歴史的にいろいろなことがあっても、やはり日本人は皇室が好きなのだ。天皇陛下と皇室についてもっと知ろう 国民から愛される皇室だが、しかし、その悩みは大きい。 16年8月8日、陛下は生前退位を望む「お気持ち」を表明された。高齢に伴う身体の衰えにより、象徴としての務めを果たすのが難しくなっていると、率直なお気持ちを示されたことに、多くの国民が驚いたはずだ。 また、およそ10年前には皇位継承問題が大きく取り沙汰され、皇室消滅の危機すら考えられた。 そのため、国民には、10年に1度、間欠泉のように皇室の大きな問題が噴出しているかのように見えるかもしれないが、実は、現在の皇室は本質的な悩みをずっと抱え続けている。さらにいえば、明治維新以降、近代の天皇、皇室が抱え続けた悩みでもある。 天皇や皇室に関する著作の多い猪瀬直樹氏は「国家にとって、儀式や祭祀は必要。そして、天皇陛下しかそれを担うことができないし、国民も無自覚のうちにそれを求めている」と言う。 つまり、その結果、陛下が激務を行っているわけで、「国民は、無自覚のうちに、陛下を追い込んでいた」(猪瀬氏)のだ。 国民の大半が「お気持ち」に賛成しているが、そもそも皇室とは何か、天皇がどういう仕事をされていて、皇室がどのような日常を送られているかを知らない日本人が大勢なのではないだろうか。 誰かを愛するということには責任が伴うように、皇室を慕うのなら、歴史や基本的な事実を知っておいた方がいい。それが、日本人にとって必要な所作といえよう。