ブックタイトル週刊ダイヤモンド16年10月8日号

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週刊ダイヤモンド16年10月8日号

Special Feature い。もう辞めさせてほしい」。不動産会社の役員として働く傍らで、個人会社も営む加藤明氏(仮名、50代)が、電話口でおびえた声を聞いたのは今年春のことだ。電話の主はシンガポール在住の田中大輔氏(仮名、40代)だった。 田中氏は、加藤氏が節税目的でシンガポールにひそかに設立したコンサルティング会社のダイレクターを任せた人物だ。何事かと事情を聞くと、シンガポール当局から、レターが届いたのだという。 ペーパーカンパニーを使った節税スキームは大流行し、雨後のたけのこのようにシンガポールで大量のダミー会社や幽霊会社が乱立していった。国税庁が繰り出す富裕層捕捉の五つの施策 金融インフラが整備され、治安も良い。おまけに税制優遇策も充実している──。 そんな近代的でクリーンなイメージを手にしたシンガポールだったが、ここ数年で、風向きは大きく変化している。それが国家間で協力体制をつくり、国際的な租税回避スキームの全容をつかもうとする動きだ。今年話題になった「パナマ文書」が、その流れを強く、決定的なものにしたのは言うを承諾。今年5月、現地の会社を閉鎖し、シンガポールからの撤退を決めた。 天然資源を持たない東南アジアの小国であるシンガポールは、国を興すために税制優遇策を打ち出し、積極的な外資誘致を行ってきた。実際に法人税率は17 %と低く、キャピタルゲイン課税、贈与税、相続税はない。 そのため、これらの税制メリットに着目した世界の実業家や富裕層たちは、2000年代半ばごろから吸い寄せられるようにシンガポールに集まった。著名投資家であるジム・ロジャース氏や米フェイスブック共同創業者のエドアルド・サベリン氏が移住したことでも知られる。 この流れの中には多くの日本人富裕層も含まれており、移住こそしていないが加藤氏もその一人。 そのレターには「事業実態の乏しいペーパーカンパニーを使い、節税スキームに加担している現地代表には罰金または懲役刑もある」という趣旨の文言が書かれていた。「家族に迷惑を掛けたくない。すぐにでも辞めたい」。田中氏は明らかに動揺した声でそう語ったという。 実際、シンガポールの刑事罰は日本よりも厳しく、執行猶予が付かないことも多い。「数日間、収監されるケースもある」(駐在員)。 仕方なく加藤氏は田中氏の辞任「怖週刊ダイヤモンド 2016/10/08 30シンガポールの邦人震撼!国境越え狭まる徴税包囲網かつて多くの富裕層が国外に財産を移し、国税の厳しい目をくぐり抜けた。今、そんな彼らに国外の逃げ場はない。徴税の包囲網が確実に忍び寄っている。国税の本気富裕層に照準を合わせたこの先、日本は人口減が加速し、税収減は確実な上、高齢化による社会保障費が増加する。財政の悪化をいかに食い止めるか。国税庁が目を付けたのが、日本に5万世帯はいるといわれる超富裕層だ。1PartYasuo Katatae