ブックタイトル週刊ダイヤモンド16年10月8日号

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週刊ダイヤモンド16年10月8日号

特集国税は見ている 現地法人設立には必ず現地在住のダイレクターの就任が必要なため、知り合いの田中氏に就任を依頼。コンサルの実態を示すべく定期的に大量の資料を作るという手間も掛けた。そんな折に、日本政府の意を受けたシンガポール当局から横やりが入ったというのが事の全容だ。 それにしても、日本政府がしゃかりきになるのはなぜなのか。それは、財政が絶望的な状況下で、これ以上富裕層たちが資産と共に悠々とタックスヘイブンへ旅立つのを見過ごせないからだ。 矢継ぎ早に切られるカードを見れば、決意の程がうかがえる。 1枚目が14年に始動した「国外財産調書制度」だ。海外に5000万円以上の財産を保有する個人に、財産の種類や価額を全て調書に記し、翌年の3月15日までに所轄税務署に提出することを義務付けた。 初年度は5539件、2年目の昨年度は8184件の提出があった。富裕層の海外資産情報は、確実に国税庁の手に渡り始めているといえる。 ただし、「対象は数万人。提出者は氷山の一角にすぎず、多くは様子見状態だ」(国際課税に詳しい国税OB)。この制度には、正当ならつく。 加藤氏がシンガポールにコンサル会社を設立したのは14年のことだ。もともと自著の印税や講演料を受け取るために日本で個人会社を設立していたが、講演依頼が増えて税引き前利益が800万円を超えるようになった。そこでシンガポールの自分の会社とコンサル契約を結ぶことで日本側の利益を圧縮することにしたのだ。 日本では税引き前利益が800万円を超えると、法人実効税率(標準税率ベース、住民税の均等割等を含めず)は約34%となり、これまでの約23%から、大幅な増税が避けられなくなる。ところがシンガポールは法人税率が17%と低い。この差をうまく突けば、法人税の節税ができるというわけだ。せる中心に日本があり、血眼になって富裕層を追い掛ける国税庁の姿があるのだ。 冒頭の田中氏をおびえさせたレターをたどれば、国税庁の影がちまでもない。 こうしてシンガポールは、過度な租税回避策を規制せよとの世界的な流れに巻き込まれることになった。そして、その流れを加速さ収益増加●印税 ●講演料税引き前利益が800万円を超え法人税率約23%※?約34%※へコンサルフィーを支払う(実質的な利益の付け替え)シンガポール当局の締め付け強化によりコンサルティング会社を閉鎖コンサルの実態を示すために大量の資料を作成シンガポール当局(IRAS:法務局)が法律に関するレターを送付警告!コンサルティング会社法人税率17%個人会社加藤氏(仮名)日本シンガポール締め付け強化で撤退へ加藤氏(仮名)が使っていたスキーム※法人実効税率(住民税、事業税等を含まない)1両社のコンサル契約を基に取引を開始456シンガポール在住の田中氏を現地ダイレクターに招聘田中氏(仮名)3加藤氏がシンガポールにコンサルティング会社を設立加藤氏2 (仮名)31 週刊ダイヤモンド 2016/10/08