ブックタイトル週刊ダイヤモンド17年3月4日号

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週刊ダイヤモンド17年3月4日号

Special Feature はや人類は勝てないのではないか」。この年末年始、韓国と中国のインターネットの対局サイトに突然登場した囲碁AI(人工知能)の戦いぶりに、プロ棋士たちは戦慄した。 囲碁界にとって、この1年はAIに揺るがされ続けた歴史の転換点だった。昨年3月、韓国のイ・セドル九段が米グーグルの「アルファ碁」に1勝4敗と完敗。その後、アルファ碁は鳴りを潜めていたが、グーグルが論文を公表したことで、その強化法を取り入れた中国製とみられる囲碁AIが昨秋ごろから続々と登場した。 こうした〝アルファ碁クローン〟に対するプロ棋士の勝率は約1?2割。だが唯一、世界ランク1位の中国の柯潔九段は互角の戦いを見せたため、「AIと何とか共存できるのではないか」という機運が棋士の中では高まっていた。 そんな甘い気持ちを吹き飛ばしたのが、後にアルファ碁の進化版と明かされた「マスター」だ。柯や井山裕太名人とみられる世界トッププロたちを相手に60戦全勝と、桁違いの力を見せ付けた。 アルファ碁が囲碁界に突き付けたのは、人間には理解できない判断をAIがしたときに、いったいどう向き合うかという問題だ。 例えば、囲碁AIに詳しい大橋拓文六段が「好手」と評価するアルファ碁のある手は、従来の常識とは懸け離れていたため「悪手」と考える棋士も多く、評価が真っ二つに割れている。 アルファ碁の選択を好手と解釈するならば、研究すべきはその局面にならないための対策だ。しかし、悪手ならばその後の対応が研究課題となる。AIの選択をどう解釈するかで、棋士のやるべき優先課題が正反対になる。 ただ、さらに強いAIが登場したとき、マスターの判断が最善ではなかった可能性もある。だが、現時点では人間にそれが分からない。「囲碁というゲーム以外の世界で同じ状況に陥れば、AIの判断の是非をめぐる人間同士の戦いが起きるのでは」と大橋は危惧する。 これほどまでにアルファ碁を強くしたのは、深層学習(ディープラーニング)と呼ばれる最新の手法だ。この技術を使って、自分自身と繰り返し戦い生み出された膨大な数の棋譜データを学んだことで、アルファ碁は「6カ月間で、人間でいえば600年分の経験を積んだ」(趙治勲名誉名人)。 AIが生み出した膨大なデータが囲碁の歴史を塗り替えたのだ。 データの活用はこれまで縁遠か「もPrologue週刊ダイヤモンド 2017/03/04 32条件を変えた! 最も難しいとされるボードゲームの囲碁でプロ棋士が人工知能(AI)に敗れた。この余波は囲碁にとどまらずスポーツにも及んでいる。データとAIの力によって勝負の世界は大きく変化している。