ブックタイトル週刊ダイヤモンド17年3月25日号

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週刊ダイヤモンド17年3月25日号

特集 国鉄vsJRの費用が掛かるという。 実際に、留萌本線に乗車してみた。深川駅から車両に乗ると、乗客が20人もいて肩透かしを食らった。だが、話を聞くと、そのうち12人が公立高校の面接試験を終えて帰宅する中学生だった。 受験生の林駿汰さんは「JRで通学できるかどうかは分からない。友達と話しやすいので、バスよりは列車で通いたい」と、やはり廃線問題に不安を感じているようだった。受験生が全員、途中駅で下車すると、残ったのは記者を含めて8人だけになった。 留萌本線の全線廃線で最も影響を受けるのが、沼田町と秩父別町から深川市方面に通学する高校生120人だ。通学手段をバスに替えると、放課後、学習塾に通うの始めている。以前から留萌市への通学、通院の手段はバスが主流だったが、廃線により旭川市への通院は不便になり、隣町まで気軽に飲みに行けなくなった。代替交通として始まった乗り合いタクシーは補助もあって安いが、前日までの予約が必要で使い勝手は悪い。 しかも、増毛町には追い打ちとなる事態が迫る。運行中の深川-留萌間も含めた全線の廃線が検討されているのだ。そうなれば、増毛町と旭川市や札幌市を結ぶ公共交通はバスだけになる。毛細血管だけだと思ったら、動脈まで切られてしまう事態だ。 増毛町の水産卸会社、遠藤水産の遠藤秋平営業部長は「昨年の廃線の影響も検証しないうちに、JR北海道は、次の廃線を言い始めた。地元への全線廃線に関する説明はない」と身構えている。自治体が抵抗してもJR北海道の答えは変わらない JR北海道は昨年11月、単独維持が困難な路線として、留萌本線(深川-留萌間)など3路線を挙げた。深川-留萌間の1列車当たりの平均乗客数は11人。100円の営業収入を得るのに1342円が難しくなる。 留萌本線の周辺にある複数の自治体は協議会を立ち上げ、廃線に反対し、路線存続に向け国の支援を求める方針を固めた。しかし、地域住民は「国やJRからお金を引き出すためのポーズだ。JRの廃線の意志は固いだろう」と冷めた目で見る。 鉄道交通の「負の連鎖」はとどまるところを知らない。1区間が廃線になると、その近隣区間の利用客数が減り、路線の廃線・縮小が連鎖してしまう。留萌本線の起点、深川駅には函館本線の特急が停車するが、地元の飲食店経営者は「留萌本線がなくなれば、深川に止まらなくなるのでは」と気をもむ。廃線は真綿で首を絞めるように地域経済を衰えさせていく。北海道が留萌-増毛間の廃線を発表した2015年とその翌年、冬季期間中に同区間を運休した。表向きは「雪崩の恐れがあるから」と説明されたが、町民は「地元住民を鉄道なしの生活に慣らすための予行演習だった」とみる。結局、運休中に雪崩は起きなかった。 増毛町にある酒蔵、国稀酒造の本間櫻企画室長は、「廃線になってから、あまりにも仕事がなくて手持ち無沙汰だ」と心配する。「公共交通がバスだけになっても、繁忙期の夏に例年通り客が来てくれるかどうか──」と、不安を隠せない様子だ。 すでに、町民生活には影響が出トップの留萌本線は6割減!沿線人口減少率ランキング*表の見方は77ページ参照。順位は小数点第2位以下を加味している1234567891011121314151617181920留萌本線気仙沼線予土線男鹿線大船渡線五能線伊東線花輪線木次線津軽線只見線釜石線陸羽西線釧網本線吾妻線美祢線三江線内子線米坂線根室本線北海道東日本四国東日本東日本東日本東日本東日本西日本東日本東日本東日本東日本北海道東日本西日本西日本四国東日本北海道▲58.2%▲53.0%▲52.1%▲50.6%▲50.3%▲50.1%▲49.1%▲48.1%▲46.6%▲45.7%▲45.7%▲45.4%▲45.4%▲45.1%▲44.6%▲44.2%▲43.1%▲42.9%▲42.5%▲42.4%順位 会社名 路線名 沿線人口減少率民営化時に駅舎が木造建築から中古車両に変わった礼受駅(上)。廃線になった留萌本線の留萌?増毛間は日本海の潮風が吹き付ける(左上)。廃線後のトンネルは金網でふさがれていた(左)33 週刊ダイヤモンド 2017/03/25H.S.H.S.H.S.