ブックタイトル週刊ダイヤモンド18年8月4日号

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週刊ダイヤモンド18年8月4日号

トSpecial Feature ランプ米大統領vs習近平中国国家主席、サッカーW杯ロシア大会、米グーグル……ジャンルも事の大小も全く異なるこれらを分析するツールとして、スパッと横串を刺せる〝最強〟の理論があるのをご存じだろうか。その名こそは「ゲーム理論」という武器に他ならない。 これは遊戯としてのゲームを直接扱うのではなく複数の主体をプレーヤーとし、それらの意思決定の在り方をゲームに見立てて研究したミクロ経済学の一分野。といっても主役を張ることが多く、ノーベル経済学賞受賞の常連である。 そうした見立てゲームの中で、参加プレーヤーが互いに最適な戦略を取り合う状況を探し当てるのがゲーム理論だ。この状況を「ナッシュ均衡」と呼ぶが、これは1994年にノーベル経済学賞を受賞した、最大の功労者ジョン・ナッシュ(左ページ上左写真)の名にちなんでいる。 ゲーム理論は駆け引きが生じるあらゆる分野に通じる。その応用範囲の広さがこの武器の強みだ。足早に見ていこう。 マーケットを揺さぶる米中の貿易戦争──。激しいプレーヤー同士のせめぎ合い、丁々発止の駆け引きは、まさにゲーム理論の得意とするところだ。「囚人のジレンマ」(32㌻参照)というキーワードを耳にしたことがあるだろう。この代表的ゲームは次のようなエッセンスを教える。「それぞれのプレーヤーが最適な行動を取っても、全体として最適にはならない」「プレーヤーにとっては、相手に協力するよりも、出し抜く(協力しない)方に魅力がある」 米中の「関税引き上げ合戦」は、まさにこの構図といえるだろう。関税引き上げは明らかに景気の足を引っ張る。全体として見れば、関税を据え置くのが望ましいに決まっている。 相手が据え置くときに、米国だけが引き上げると、大きなメリットをもたらす。自国だけなら〝おいしい〟のである。しかし、そうなると相手も黙ってはいない。中国も引き上げないとデメリットが大き過ぎる。かくして関税引き上げ競争に突入する。「自らの支持層にアピールしたい」と強硬な保護主義に走るトランプ大統領、「弱腰との批判も出かねず、報復に走らざるを得ない」という習主席。こうした構図は、ゲーム理論の「チキンゲーム」「コミットメント」などの概念ですっきりと整理整頓が可能だ。週刊ダイヤモンド 2018/08/04 30器「ゲーム理論」の力米中貿易戦争からW杯サッカーまで