ブックタイトル週刊ダイヤモンド19年10月26日号

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週刊ダイヤモンド19年10月26日号

週刊ダイヤモンド 2019/10/26 26Special Feature チウムイオン電池の研究開発で、今年のノーベル化学賞に輝いた旭化成の吉野彰名誉フェロー。サイエンス界の最高の栄誉をつかんだ思考法に迫った。(聞き手/ダイヤモンド編集部・新井美江子)──リチウムイオン電池は事故がなくならない限り、ノーベル賞は難しいといわれてきました。それが今回受賞となったのは、事故の危険性より、環境問題の解決の方が重要だと、世界が一転したからでしょうか。 おっしゃる通り。今の世界の状況って、IT革命(1990年代)に至るまでの10 年間と、ものすごく似ています。──リチウムイオン電池の開発を決めたのは、「ポータブル」という言葉がきっかけだったとか。 ポータブル、持ち運べるようにするということですね。これが途中で電源コードをなくす「コードレス」と、通信ケーブルをなくす「ワイヤレス」の二つに進化した。後になってようやく、具体的に何が起こるか分かったわけです。このように、世界が実際に変わる局面より先に出てくるのが言葉。そして、その言葉がないと未来は語れないんですよね。──どういう意味ですか。 研究開発とは結局、「自分がどれだけ独創的な技術を持っているか」と、「それを世の中の人は本当に求めているか。ニーズがあるのか」の二つをつなげることです。しかしどちらも、本物かどうかを見極めるのが難しい。 なぜなら技術の方は、自分では世界初と思っているけれど、他の人もすでにやっていたなんてケースがいっぱいあるから。だから今の自分の技術がどんな位置付けにあり、将来本物になれるかどうかを冷静に見なくてはならない。 一方、ニーズとは未来のことでしょう。つまり、ニーズを捉えようと思ったら、未来を予測しないといけない。じゃあ何をよりどころにして未来を読み解くかというと、それが言葉。今で言うバズワード、新しい言葉なんです。ある種の社会現象みたいなもので。その裏に大きなヒントが潜んでいる。それを嗅ぎ取ることが、研究者には絶対に必要です。──受賞発表直後の記者会見では成功の秘訣に、「柔軟性と執着心」を挙げました。しかしその姿勢で臨んでも、「この技術は絶対来る」と確信し続けられるものですか。 それが一番難しいところ。来ると分かっていたら、みんなノーベ吉野 彰2019年ノーベル化学賞受賞Akira Yoshinoよしの・あきら/1948年生まれ(71歳)。京都大学大学院工学研究科石油化学専攻修士課程修了。工学博士。72年旭化成工業(現旭化成)入社。リチウムイオン電池の研究には81年に着手した。Chiyomi TadokoroInterview柔軟に執着せよリ後進の研究者に何かメッセージをとお願いすると、「挑戦」の二文字を強い筆致で書いてくれた