ブックタイトル週刊ダイヤモンド19年11月23日号

ページ
3/6

このページは 週刊ダイヤモンド19年11月23日号 の電子ブックに掲載されている3ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

週刊ダイヤモンド19年11月23日号

方向へ進んだりするもの。社会学者や経済学者のように、過去の統計やエビデンスから考えると、未来予測を見誤る」(吉野氏)。 現在、トヨタが全く同じ悩みを抱えている。CASE時代の未来が見通せず、トヨタの勝ちパターンも提示できないというのだ。今のトヨタにはHVに匹敵する将来の飯の種がない 今のトヨタには1997年に世界初のハイブリッド車(HV)「プリウス」を発売したときに匹敵するような将来の飯の種がない。 かつてのトヨタは、自動車のテクノロジーに関して、「未来を見通せない」という経験をしたことはなかった。厳密に言えば、未来を多少見誤っても軌道修正ができた。水面下では有望な技術を全て自前で開発しているので、情勢が変われば水面下から地上へ技術を昇格させて、時流にキャッチアップすればよかったのだ。 例えば、HVのプリウスに代表されるエコカー開発は、自前主義 章一郎氏は、トヨタの将来が心配で焦燥感に駆られて、吉野氏を訪ねたというのが真相のようだ。 吉野氏の持論は、「研究開発で一番重要なのは、未来予測である」。未来を読み解くための拠り所としてきたのが、〝バズワード〟だ。社会に新しい概念が生まれるとき、言葉は独り歩きで流行しても、その意味や定義は曖昧なままだ。その段階で、「研究者は、バズワードが生まれる社会現象の裏にある〝大きなヒント〟を嗅ぎ取ることが必要だ」(吉野氏)という。 吉野氏がリチウムイオン電池の開発を決めたのも、「ポータブル(持ち運びできる)」というバズワードがきっかけだった。電源コードをなくす「コードレス」、通信ケーブルをなくす「ワイヤレス」といったポータブルな世界を手助けするバズワードが追加されてゆく過程で、吉野氏は「持ち運びできる電池の未来」をはっきりと予測することができた。現実世界で変化が起きる前に、である。 テクノロジーが切り開く未来は、既存技術の延長線上にあるとは限らない。「世の中は思いも寄らない 月1日、後にノーベル化学賞に選ばれることになる吉野彰・旭化成名誉フェローの元を意外な人物が訪れていた。吉野氏が登壇した愛知県主催のセミナーでの一コマである。 当日の飛び入り参加でやって来たのが、豊田章男・トヨタ自動車社長の父、豊田章一郎氏(トヨタ名誉会長。94歳)だった。 一方の吉野氏は、リチウムイオン電池の発明者である。近年、自動車産業には「CASE(ケース。コネクテッド、自動運転、シェアリング&サービス、電動化という四つの技術トレンド)」の大波が襲い掛かっている。そのうち、車の「電動化(E)」を進めるために不可欠なキーデバイスとなるのがリチウムイオン電池だ。 章一郎氏が吉野氏に会いに行った意図はどこにあったのか。 吉野氏本人が、相談事の中身について打ち明ける。「未来のモビリティ社会がどのようになるのか。章一郎さんも章男社長も、未来の予測が難しくなったことに大変な危機感を持っている。何かヒントが欲しかったんだろうね」。トヨタに忍び寄る「三つの危機」25 週刊ダイヤモンド 2019/11/238トヨタ1Part天動説つのだよしお/アフロ、Chiyomi Tadokoro