ブックタイトルシックス 2018 SPRING

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シックス 2018 SPRING

083La l iber te d u vinムの誕生だったのかもしれない。しかし、破るべきルールなくして、人間に自由はない。ボルドーでも、あるいは世界的に認知された伝統的なワインの産地というなら、シャンパーニュでも、伝統は、保守と革新との連続によって紡がれている。そこにあるのは決して、硬直化したアカデミズムだけではない。 詩人にして美術批評家のボードレールは1855年の万国博覧会についてこんなことを書いた。「美を表現する務めを負った人々が、あれら免許皆伝の教授たちの規則に従ったとするなら、美そのものがこの地上から消え失せてしまうであろうことは、万人の容易に考え及ぶところだ。なぜといって、そうなれば、あらゆる典型、あらゆる観念、あらゆる感覚は、一つの広大な統一、単調で没個性的な、アンニュイと虚無のように果てしもない統一のなかにとけこんでしまうであろうからだ。生の必要不可欠の条件である多様さも、生から消し去られるであろう」 もしもボルドーで、シャンパーニュで、どうしても規則に従いたくないのなら、南へ、たとえばラングドックにゆけばいい。ラングドックもフランスではないか、というのなら、たとえばチリはどうだろう? いまやワインは世界のあらゆる場所で、あらゆる背景をもった人によって造られている。 だから、今日、口にするワインを選ぶとき、ぼくたちの目の前には無限とすらおもえる多様なワインがならぶのだ。どれを選べばいいかわからない? それは当然のことだ。その一本一本が、それぞれにちがったワインなのだ。たとえおなじブランド、おなじラベルのワインでも、2015年と2016年ではちがうワインだ。それはぼくたちがひとりひとりちがっていて、そのひとりひとりにしても、昨日と今日とでは、ちがうように。 人間が自由であればそれだけ、ワインも自由だ。すずき・ふみひこ ソルボンヌ(パリ第4)大学にてフランス文学を専攻。研究テーマは19世紀のダンディズム。翻訳、雑誌への寄稿、ウェブメディアの編集、青果のマーケティングをへて、現在は、ワインを食や暮らしのなかに位置づけて提案する、『WINEWHAT!?』の発信元である株式会社LUFT メディアコミュニケーションの代表取締役社長をつとめるセーヌ川沿いの機械館別館では、蒸気機関を展示。技術革新をもって人類は進歩したのか、利便性が人を愚鈍にするのか。技術の功罪をめぐる議論が活発化したウージェーヌ・ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』。7月革命を描いた1830年の作品だが、政治的理由で48年の革命まで展示は控えめだった。同時代の事件を主題にすること、荒々しい筆使いをあえて残す画面、躍動的な人体と構図。アカデミズムには生み出せない名作cRMN-Grand Palais/amanaimages 国立国会図書館デジタルコレクションより