経済は「予想外のつながり」で動く
経済は「予想外のつながり」で動く
書籍情報
- ポール・オームロッド 著/望月衛 訳
- 定価:2200円(本体2000円+税10%)
- 発行年月:2015年09月
- 判型/造本:46並製
- 頁数:384
- ISBN:978-4-478-02181-1
内容紹介
ソーシャルメディア、グローバル化……変化する21世紀の世界に対して、経済学はまだ有効か? 学問の世界から実業まで飛び回るエコノミストにして「ネットワーク理論」を経済学に持ち込んだ第一人者が、「世間知らず」となった経済学を「つながり」と「模倣」で新しい次元に進化させる。経済学100年の常識を覆す1冊。
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目次
訳者によるイントロダクション
はじめに
序章 ネットワーク理論が経済学を進化させる
第1章 100年前の経済学で21世紀の社会を理解できるのか?
── 経済学からネットワーク理論へ
「火あぶりにされた殉教者」と「暴徒化したフーリガン」の共通点
社会的ネットワークがインセンティブ理論を追いつめる?
拡大する経済学、陳腐化する「合理的経済人」モデル
フーリガンの暴動は「効用理論」で解けるのか?
集団の選好が個人の選好を上回るとき
「頑健だが脆弱」── ネットワークでもっとも大事なこと
頭のいい人がなぜ国家機密を売りわたしたのか ──「信念」とインセンティブ
来世の効用を最大化する? ── 宗教を経済学で分析すると……
メアリー女王を悩ませた「改宗」へのインセンティブ設計
進んで処刑された聖職者のネットワークが「恐怖政治」を無効化した
「アラブの春」と「プラハの春」、そして不確実性
必要なのは「ポジティブ・リンキング」── 21世紀の経済モデルを求めて
第2章 タバコの税率を上げたら健康被害が増えた?
── インセンティブから影響力へ
インセンティブはもはや万能ではない!?
なぜ経済学は「数学まみれ」なのか?
需要曲線ですら「いつも必ず」は成り立たない
売春婦VSコペンハーゲン市長 ── なぜこうも意図せざる結果ばかり起こるのか
なぜタバコの税率を上げたら健康被害が増えたのか
経済学者の「あたかも」にご用心
「懲役刑」は犯罪抑止のインセンティブとなっているのか?
法を守る人のネットワークがもたらす「前向きなつながり」
第3章 サイモンとケインズが突いた「合理的経済人」の矛盾
── 合理性から経験則へ
社会科学の巨人、ハーバート・サイモン
「収穫逓減」は本当にいつでも成り立つのか?
「限定合理性」── 行動経済学の父でもあったサイモン
買う前にすべてわかっている人なんていない ── スティグリッツとアカロフの貢献
経営者と株主の「情報格差」で損する人、得する人
「市場の失敗」という錯誤 ── 規制さえすればうまくいくのか
人は直感で行動する ── スミスとカーネマン
なぜ人はアマゾンの「翌日配送」にお金を払うのか?
大流行の「ナッジ」──「見せ方」1つで行動が変わる
ただただわからない ── 事後でさえ「最適」な選択は不明
非合理だけど使える生き残りの戦略「ヒューリスティック」
チェスが「合理的な経済人」を否定する?
アリストテレスと最新科学の接点
ケインズの隠れた功績 ── ネットワーク理論を予言していたもう1人の巨人
「インセンティブ×ネットワーク」の正しい掛けあわせ方とは
第4章 経済学者はなぜいまだに金融危機を防げないのか
── 数式から信頼へ
「危機」だらけの金融市場
金融デリバティブを発明した3人組
一般均衡が存在するための「恥ずかしい」仮定とは?
「疑心暗鬼」という名の伝染病がネットワークを破壊する
日本の「失われた20年」が大恐慌にならずに済んだのはなぜか
登場人物が1人の『マクベス』? ──「代表的エージェント」の問題
「景気の波」を説明できない高度な経済モデル
バーナンキの経済学者らしからぬ「介入」
理論でなく経験則 ──「信頼」の担保が取り付け騒ぎを防いだ
金融市場に必要なのは数学モデルより信頼のネットワーク
第5章 なぜひと握りのスターだけが「幸運」を手にするのか
── 需要と供給から偶然と流行へ
4000倍もの差がついた2つの「エクストリーム・アイロニング」
編集者のジレンマ ── 素晴らしい教科書が必ずしも売れないのはなぜ?
「つながり」が持つとてつもない影響力をモデル化する
「他の連中がかぶらないからだ!」── シェリングの「二者択一」研究
エージェントの行動は「人まねルール」で決まる
口コミ・マーケティングに「再現性」がない理由
古典的な需要曲線ですら成り立たない ──「バンドワゴン効果」
経済学が解くべき21世紀の問題
第6章 複雑なネットワークを読みとく3つのポイント
── 正規分布からべき乗則へ
ネットワーク効果を探知する武器としての「正規分布」
最初の3つで98% ── グーグル検索で体感するデータの「歪み」
成功したユーチューバーがますます成功するのはなぜ? ── 優先的選択
超大事なポイント:3つの「種族」をおさえれば、ネットワークは理解できる
「スケール・フリー」のネットワーク ──「ハブ」が社会を動かす
マーケティングで成功するために探すべき人は誰か
「狭い世間」のネットワーク ──「長距離連結器」を特定しよう
「ランダム」なネットワーク ── 構造のない伝染と流行をモデル化する
マスコミは本当に「インフルエンサー」か?
ハイエクの慧眼 ──「知識人」がネットワークを支配する
ネットワーク効果の副産物「不確実性」といかにして立ち向かうか
第7章 「人まね」、それは不確実な世界を生きぬくための最適戦略
── 合理的選択から模倣へ
100年前の素朴な世界
マルクスが見抜いた「新しい資本主義」の本性
マクルーハンの予言と100億の選択肢
「ヒックの法則」が突きつけたもの ── 人まねの動機①「次元を減らす」
ヒッタイト帝国と現代セレブの共通点 ── 人まねの動機②「はやりに乗る」
アッシュの実験 ── 人まねの動機③「多数派に合わせる」
バリ島の農業を何世紀も守ってきた人まね戦略
世界最高峰の学者たちが驚いた「社会的学習」の威力
なぜ一部のバンドに人気が集中するのか
ウソの情報ですらランキングに影響する
何が売れるかを事前に予測することは可能か?
ポリアの壺 ── 人気は品質とは関係ない
合理的経済人から「合理的模倣人」へ
第8章 高失業率の町に起業家精神をもたらすことはできるのか?
── 格差の固定化からランダムな変化へ
格差を覆すことは可能か?
壊滅したイギリス炭鉱労働者の失業問題
「順位の入れ替わり」── ヒットチャートと都市ランキング
うちの地元チームがマンチェスター・ユナイテッドになれなかったのはなぜか
じゃあ、「成功」がいつまでも続かないことはどうやって説明する?
生物学と経済学を融合させると……
再び中世イングランドへ ── 魅力的でもない国教会がライバルに勝てた理由
赤ん坊の名前の付け方に見る「人まね」モデルの整合性
21世紀版行動モデルの完成 ── 意思決定は質より模倣でうまくいく
第9章 ネットワーク理論で社会を豊かにすることはできるのか?
── 上からの政策から「人伝て」の政策へ
ちょっと復習 ── なぜネットワーク効果を考えるべきなのか
大きな政府と「市場の失敗」
たとえ非合理に見えても「経験則」を許すモデルを
「経済学者=社会のエンジニア」という信仰
ネットの「オススメ機能」が政府の監視につながるって本当?
失業問題は「上から」ではなく「人伝て」で解決する
大量飲酒を広める要因を突き止めろ! ── 信頼できる「指標」の見つけ方
ポジティブ・リンキングを起こすにはどうすればいい?
「最初に行動を変える人」を見つけよう
アシモフの教訓 ── 人は政府の予測を必ず超える
「大不況」にも揺らがなかったスウェーデンの銀行 ── 意思決定の「分散化」
「特効薬」を探すのではなく、たゆまぬ試行錯誤を
参考文献へのご招待
索引
著者
ポール・オームロッド(Paul Ormerod)
イギリスのエコノミスト。ケンブリッジ大学とオックスフォード大学で経済学を修めた後、『エコノミスト』誌で経済予測に携わる。業績は学界から実業界にまで及び、1982年から1992年までヘンリー予測センター所長を務めたほか、ロンドン大学、マンチェスター大学で客員教授として教鞭を執っている。イギリス社会科学院のフェローであり、経済学への貢献に対し、ダラム大学から名誉科学博士号(DSC honoris causa)を授与されている。
1994年の著書『経済学は死んだ』(ダイヤモンド社)では、正統派経済学を痛烈に批判して話題となった。他の著書に『バタフライ・エコノミクス』(早川書房)、『WHY MOST THINGS FAIL(なぜほとんどが失敗に終わるのか)』(未邦訳)がある。特に『ビジネスウィーク』誌のUSビジネス・ブック・オブ・ザ・イヤーに選出された『WHY MOST THINGS FAIL』は、ネットワーク理論を経済学に取り込んだことで話題を呼んだ。
訳者
望月 衛(もちづき・まもる)
大和投資信託株式会社 リスクマネジメント部。京都大学経済学部卒業、コロンビア大学ビジネススクール修了。CFA、CIIA。投資信託等のリスク管理やパフォーマンス評価に従事。訳書に『ブラック・スワン』、『まぐれ』(ともにダイヤモンド社)、『ヤバい経済学』、『その問題、経済学で解決できます。』、『美貌格差』(いずれも東洋経済新報社)、『ヘッジホッグ』、『ウォール街のイカロス』(ともに日本経済新聞出版社)等がある。
電子書籍は下記のサイトでご購入いただけます。
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