過去20年の「5月」の為替市場の値動きを徹底的に検証!
2024年5月のFXトレードで使える「アノマリー」を探せ!
為替市場には、さまざまな「アノマリー」が存在します。「アノマリー」とは、理由や要因が明確にあるわけではないが、なぜかそうなりやすい現象のことです。たとえば、バケーションシーズンで海外旅行に行く人が増えることによる外貨への両替需要、グローバル企業の決算時期や輸出・輸入企業などの実需の動きなどが影響して、例年、決まった時期に特定の通貨が買われやすい傾向などがあると考えられています。
特に有名なアノマリーとして、「ゴトー日(5・10日)アノマリー」があります。これは、金融機関が顧客に適用するその日のレートを決める日本時間の午前10時ごろの「仲値」に向けて、特にグローバル企業の決済が集中しやすい5や10のつく日は米ドルが買われて円安になりやすい傾向にあるというもので、この動きを利用した「仲値トレード」と呼ばれる取引手法は一部のFXトレーダーから注目されています。
この連載では、為替市場の過去の値動きデータを月ごとに検証して、上記のような「アノマリー」を探しています。今回は過去の「5月」のデータを集計して、2024年5月のFXトレードで活用できる「アノマリー」を探してみました。
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5月は英ポンド/米ドルとスイスフラン/円のアノマリーに注目!
過去20回中15回が「英ポンド安・米ドル高」「スイスフラン高・円安」
はじめに、月足の統計データで5月のアノマリーを確認していきましょう。
下の表は主要通貨ペアの過去20年間の月足を調べた中から、日本のFXトレーダーの取引量が多い米ドル/円、ユーロ/米ドルなどの主要通貨ペアと、5月に注目したい傾向のある通貨ペアの、「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数をまとめたものです。
これを見ると、5月は英ポンド/米ドルで陰線の出現回数が20回中15回と多く、「英ポンド安・米ドル高」のアノマリーがあります。これは、陽線の出現回数が20回中16回で、「英ポンド高・米ドル安」のアノマリーがあった4月とは真逆となる、興味深い傾向です。
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5月の「英ポンド高」は、英国で「バンクホリデー」と呼ばれる祝日が、第1月曜日と最終月曜日の2回もあることが理由のひとつと考えられます(今年は1日のアーリー・メイ・バンクホリデーと、27日のスプリング・バンクホリデー)。「バンクホリデー」は、もともとは銀行員の休日(公休日)として設定されましたが、今では国民の祝日との位置づけで、ほとんどの企業や公共施設、店舗も休業となります。
英国を含む海外では、日本ほど祝日が多くありません。英国では祝日が年間に8回しかなく、そのうち1カ月の間に祝日が2回あるのは5月と12月だけなので、5月は祝日の影響で経済活動が活発化し、英ポンドが買われやすいと推測できます。
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また、5月はスイスフラン/円で陽線の出現回数が20回中15回と多く、「スイスフラン高・円安」のアノマリーもあります。
自然が豊かな観光立国のスイスでは5月から春となり、スイスを訪れる旅行客が増加します。スイスは日本と同じように四季があり、5月は花見やアルプスハイキングが人気となるシーズンに入るため、これらを目的とした海外からの観光客が増え、スイスフランの需要が高まるからと考えられます。
そのほか、少しマイナーな通貨ペアではありますが、豪ドル/カナダドルには陰線の出現回数が20回中17回と、「豪ドル安・カナダドル高」のアノマリーがあります。豪ドル/カナダドルを取り扱っているFX口座はそれほど多くはありませんが、取引しているFX口座で豪ドル/カナダドルを取引できるなら、注目してもいいかもしれません。
5月2週目には強い「ニュージーランドドル安」のアノマリーを発見!
9日と10日の、ニュージーランドドル/米ドルの陽線の出現確率はゼロ%!
次に週足の統計データを見ると、5月は2週目に「ニュージーランドドル安」のアノマリーが確認できます。
下の表は、過去20年間の主要通貨ペアの週足を調べ、それぞれの日が含まれる週足の「陽線の出現確率」を日別に集計した週足統計データの中から、ニュージーランドドルが絡んだ主な通貨ペアの、5月2週目を抽出したものです。「週間平均」は今年(2024年)のカレンダーをもとに、週足に含まれる各日の陽線の出現確率から算出した平均値で、確率が高ければ陽線になりやすく、確率が低ければ陰線になりやすかったということがわかります。
これを見ると、5月の2週目(今年は5月6~10日が営業日)はニュージーランドドル/円、ニュージーランドドル/米ドル、ニュージーランドドル/カナダドルで週間平均が14~22%と、「ニュージーランドドル安」の傾向があることがわかります。
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特に、ニュージーランドドル/米ドルは9日と10日の陽線の出現確率がゼロ%と、過去20年はすべて下落していたという、強い「ニュージーランドドル安」のアノマリーが確認できます。また、ニュージーランドドル/円やニュージーランドドル/カナダドルも、8日から10日にかけて陽線の出現回数が4%~21%と低くなっています。
このことから、5月は2週目、特に週後半のかなり強い「ニュージーランドドル安」アノマリーに注目です。
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日足では1日・17日・27日の「円安」と、1日・22日の「米ドル高」に
注目! 特に27日の米ドル/円は、過去20年では80%以上の確率で上昇!
次は、日足の統計データの中から、5月に注目しておきたいアノマリーを紹介しましょう。
下の表は、過去20年間における主要な通貨ペアの5月の日足を数え、その中から日本円が絡んだ通貨ペアの日別の「陽線」の出現確率をまとめたものです。確率が高ければ陽線になりやすく、確率が低ければ陰線になりやすかったということがわかります。なお、出現確率は直近10年間の動向に比重を置いた加重平均です。
これを見ると、陽線の出現確率が1日は米ドル/円、ユーロ/円、スイスフラン/円で70%台、17日は米ドル/円、ユーロ/円、英ポンド/円で70%台、カナダドル/円で80%台、27日は米ドル/円とカナダドル/円で80%台、ユーロ/円とニュージーランドドル/円で70%台と高くなっています。
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このことから、5月は1日・17日・27日に「円安」のアノマリーがあることがわかります。一方、28日は、英ポンド/円、ニュージーランドドル/円、カナダドル/円で陽線の出現確率が30%以下と低いので、少し「円高」のアノマリーがあることも、あわせて注目しておきましょう。
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また、同じように米ドルが絡んだ通貨ペアの日別の「陽線」の出現確率をまとめたものが以下の表になります。
これを見ると、米ドルが絡んだ主要通貨ペアでは、陽線の出現確率が1日はユーロ/米ドル、豪ドル/米ドル、ニュージーランドドル/米ドルで30%と低く、米ドルが基軸通貨(分子側)の米ドル/円、米ドル/カナダドルで70%台と高くなっています。
また、22日はユーロ/米ドル、豪ドル/ドルが30%以下と低く、米ドルが基軸通貨の米ドル/円と米ドル/カナダドルが70%以上と高いことがわかります。
このことから、5月は1日と22日の「米ドル高」のアノマリーにも注目です。
主要株価指数では、過去20年でS&P500に株高アノマリーを発見!
株式の相場格言「セルインメイ(Sell in May)」を検証した結果は?
最後に、為替の動向にも影響を与える株式市場の5月のアノマリーも紹介します。
下の表は主要株価指数の過去20年間の月足を調べ、「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数をまとめたものです。
これを見ると、5月は米国の代表的な株価指数のひとつである「S&P500」で、陽線の出現回数が20回中15回と多く、株高のアノマリーがあることがわかります。また、アノマリーとまではいえませんが、日経平均株価も12回、NYダウも12回と、陽線の出現回数が陰線の出現回数を上回っています。
なお、株式の世界には“セル・イン・メイ(Sell in May)”という有名な相場格言があります。これは、「Sell in May and go away, don't come back until St Leger day.」がオリジナルで、日本語では「(株を)5月に売ってどこかへ行き、9月第2土曜日のセント・レジャー・デーまで戻ってくるな」という意味になります。
つまり、“株式への投資は5月にいったん止め、9月の第2土曜日以降に再開しよう”という、5月から9月にかけては株価が軟調に推移しやすいことを示した相場格言ですが、本当にそのような動きとなっているのかを、実際に検証してみました。
以下の表は、過去20年間における日経平均、NYダウ、米ドル/円の、セル・イン・メイの期間に該当する5~9月の5カ月間と、それ以外の10~4月の7カ月間の、陽線の出現回数と平均値幅を集計してまとめたものになります。
これを見ると、日経平均の陽線の出現回数は、5~9月が20回中10回、10~4月が13回となっていて、5~9月よりも10~4月のほうが多くなっています。また、下落した年も含む計20年間の平均値幅も、5~9月の+200.95円に対して10~4月は+877.28円と4倍以上となっていて、10~4月のほうが上昇幅も大きかったことがわかります。
同じように、NYダウは陽線の出現回数が5~9月は12回に対して10~4月は15回と多く、平均値幅も5~9月は+77.84ドル、10~4月は+1107.67ドルと、14倍近くの大きな差があります。
ただし、セル・イン・メイの期間に該当する5~9月の間も、日経平均は陽線の出現回数と陰線の出現回数が同数で、NYダウに至っては陽線の出現回数のほうが多く、平均値幅に関しては日経平均とNYダウの両方でプラスになっているため、必ずしも5月から9月にかけて株価が軟調に推移するとは言えないと思います。
とはいえ、10~4月の期間と比較すると、5~9月は平均値幅のパフォーマンスが明らかに見劣りするので、5~9月は10~4月よりも株価が上昇しにくい傾向にあり、特にNYダウでは「セル・イン・メイ」の相場格言に、一定の有効性が認められると考えることもできるのではないでしょうか。
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今回紹介したデータが、5月のFXトレードの参考になれば幸いです。次回は6月のアノマリーを紹介しますので、お楽しみに!