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過去20年の「5月」の為替市場の値動きを徹底的に検証!
2023年5月のFXトレードで使える「アノマリー」を探せ!

 為替市場には、さまざまな「アノマリー」が存在します。「アノマリー」とは、理由や要因が明確にあるわけではないが、なぜかそうなりやすい現象のことです。たとえば、バケーションシーズンで海外旅行に行く人が増えることによる外貨への両替需要、グローバル企業の決算時期や輸出・輸入企業などの実需の動きなどが影響して、例年、決まった時期に特定の通貨が買われやすい傾向などがあると考えられています。

 特に有名なアノマリーとして、「ゴトー日(5・10日)アノマリー」があります。これは、金融機関が顧客に適用するその日のレートを決める日本時間の午前10時ごろの「仲値」に向けて、特にグローバル企業の決済が集中しやすい5や10のつく日は米ドルが買われて円安になりやすい傾向にあるというもので、この動きを利用した「仲値トレード」と呼ばれる取引手法は一部のFXトレーダーから注目されています。

 この連載では、為替市場の過去の値動きデータを月ごとに検証して、上記のような「アノマリー」を探しています。今回は過去の「5月」のデータを集計して、2023年5月のFXトレードで活用できる「アノマリー」を探してみました。

5月の週足は、10日と11日にニュージーランドドル/米ドルが100%の
確率で下落! 2週目はニュージーランドドルの下落アノマリーに注目!

 はじめに、週足の統計データで、5月の週別のアノマリーを紹介していきましょう。

 2003~2022年までの過去20年間について、いろんな通貨ペアの5月の週足チャートを調べたところ、ニュージーランドドル(NZドル)に関連した通貨ペアで、5月の2週目に強いアノマリーが出ていることがわかりました。そこで、下の表のように、ニュージーランドドル関連の通貨ペアの5月2週目の週足に含まれる日別の「陽線」の出現確率をまとめてみました。各表の右側に記載した「週間平均」は、月曜日から金曜日までの各日の陽線の出現確率から算出した平均値になります。

週足のアノマリー情報

 上の表組を見ると、ニュージーランドドル/米ドルでは、過去20年における5月8日~12日の陽線の出現確率が0%~21%と低く、その中でも10日と11日は0%と、過去20年間で一度も陽線が出現していないことがわかります。

 そのほかにも、ニュージーランドドル/カナダドルで9日~12日の陽線の出現確率が4~10%、ニュージーランドドル/円で9日~11日の陽線の出現確率が14~19%と、かなり低くなっています。

 このことから、5月は2週目にニュージーランドドルに売られやすいアノマリーがあるということがわかります。特に、ニュージーランドドル/米ドルとニュージーランドドル/カナダドルは5月9日~11日にかけてかなり陽線確率が低くなっていて注目のアノマリーです。
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月足では、豪ドル/カナダドルの陰線の出現確率が85%で豪ドル安、
スイスフラン/円では陰線の出現確率75%で円高になりやすい傾向!

 また、月足では5月は豪ドル/カナダドルに注目です。

 豪ドルは南半球に位置する豪州(オーストラリア)の通貨、カナダドルは北半球に位置するカナダの通貨で、豪州とカナダは地球のほぼ反対側に位置しています。つまり、両国の季節は正反対で、5月の豪州は秋、カナダは春になります。

 そんな国同士の通貨ペアとなる豪ドル/カナダドルには、5月に強い偏りがあります。

5月の月足アノマリー

 上の表を見ると、5月の豪ドル/カナダドルは過去20年間で陰線の出現回数が17回とかなり多く、85%の確率で陰線が付いていたということになります。

 このことから、5月は豪ドル/カナダドルで豪ドルが下落しやすいアノマリーがあることがわかります。

 ただし、豪ドル/カナダドルを取り扱っているFX口座はあまり多くはありません。もし、使っているFX口座が豪ドル/カナダドルを取り扱っていないときは、豪ドル/円のショート(売り)ポジションと、カナダドル/円のロング(買い)ポジションを同時に持てば、実質的に豪ドル/カナダドルの売り(ショート)ポジションになりますので、こうした方法でアノマリーを活用するのも1つの手になると思います。
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 そのほかに、5月は英ポンド/米ドルで陰線の出現回数が14回(陰線の出現確率70%)、スイスフラン/円は陽線の出現回数が15回(陽線の出現確率75%)と偏っているので、こちらにも注目です。

豪ドル/カナダドルは、5月の前半に下落しやすい傾向を確認!
日足ベースでは、10日と15日にカナダドル買いのアノマリーがある

 次に、より細かい日足の統計データで日別のアノマリーを紹介していきましょう。

 下の表は、カナダドルが絡んだ通貨ペアの、過去20年間の日足の「陽線」の出現確率を日別にまとめたものです。

日足アノマリー情報(カナダドル関連ペア)

 これを見ると、5月10日の陽線の出現確率がカナダドル/円とカナダドル/スイスフランは81%、カナダドルが決済通貨(分母側)のユーロ/カナダドルは24%、英ポンド/カナダドルとニュージーランドドル/カナダドルは19%と、カナダドルの上昇する確率が高くなっています。

 さらに、15日についても陽線の出現確率がユーロ/カナダドルで19%、豪ドル/カナダドルで11%、ニュージーランドドル/カナダドルで15%と低くなっており、カナダドル買いのアノマリーがあるようです。

 このことから、5月は10日と15日にカナダドルが買われやすいアノマリーがあるということがわかります。

 さらに、先ほど月足データで”5月は豪ドル/カナダドルが下落しやすい”と紹介しましたが、日別の統計データで見てみると、豪ドル/カナダドルは5月の1日、9日、15日に、陽線の出現確率が低くなっていることがわかります。

 つまり、5月の豪ドル/カナダドルの下落アノマリーは、5月前半に起こりやすいということわかるので注目です。

株式市場で有名な相場格言「セルインメイ(Sell in May)」は本当か?
過去20年間のデータを調べた結果、5月の株価は陽線の回数が多い!

 ところで、投資の世界には“セル・イン・メイ(Sell in May)”の有名な格言があります。これは、日本語で「(株は)5月に売れ」という意味で、株式市場にまつわる相場格言です。

 「株の格言なのでFXには関係ないでしょ?」と思われる方もいるかもしれませんが、実は株式と為替には一定の相関関係があります。金融市場における相関関係とは、別の銘柄なのに一方の価格が上昇すると、もう一方の価格が減少または増加する関係のこと。2つの価格の動きが同一方向の場合は「正の相関」、逆の場合は「負の相関(逆相関)」といいます。

 よく知られているのは「株高・円安」「株安・円高」の負の相関関係で、これにはさまざまな理由がありますが、株と為替は“表裏一体”の関係性から、株の値動きが為替の変動に影響を与える、またはその反対の動きが確認できるときがあります。

 つまり、「セル・イン・メイ」で5月に株が売られやすいアノマリーがあるのなら、5月は「株安・円高」の傾向が確認できるはずで、実際に一部のトレーダーや市場参加者の中で話題になることがあります。

 そこで、日経平均やNYダウ、米ドル/円やユーロ/円などの5月の月足データを調べ、「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数をまとめたものが以下の表です。

セル・イン・メイのアノマリー検証

 これを見ると、過去20年間における5月の陰線の出現回数は、日経平均で9回(出現確率45%)、NYダウで7回(出現確率35%)と、「セル・イン・メイ」の相場格言は当てはまらず、むしろ5月は株高だった(陽線だった)回数のほうが多かったという結果でした。

 そして、為替も陽線の出現回数が米ドル/円は10回(出現確率50%)、ユーロ/円は13回(出現確率65%)と、下落(円高)の傾向は認められず、ユーロ/米ドルにも目立ったアノマリーはありません。

 このことから、相場格言として有名な「セル・イン・メイ」は、近年では確認できないことがわかります。

「セル・イン・メイ」は過去のアノマリー。5月~9月の平均変動幅や
平均利益は10~4月を上回り、「バイ・イン・メイ」の時代が到来か!?

 実は、この「セル・イン・メイ」には、あとに続く言葉があります。

 「Sell in May」の相場格言は「Sell in May,and go away; don't come back until St Leger day.」がオリジナルで、日本語に訳すと「(株を)5月に売ってどこかに行き、9月の第2土曜日のセント・レジャー・デーまで戻ってくるな」となります。

 つまり、“株式への投資は5月にいったん止めて、9月の第2土曜日以降に再開しよう”ということです。これは、例年5月から9月までの株式相場は動きが少なく、10月から4月に相場の動きが活発化していたことに由来しているようです。

 そこで、過去20年間における日本と米国の代表的な株価指数の月足データを調べ、「陽線」の出現回数と「陰線」の出現回数をまとめたのが以下の表になります。

日米の主要株価指数の月足アノマリー情報

 これを見ると、5月~9月の期間に明確な下落傾向が認められるものはなく、むしろ7月に陽線の出現回数でNYダウが15回、ナスダックとS&P500で14回など、陽線の出現回数(上昇した回数)のほうが多かった月も確認できます。

 さらに、以下の表は過去20年間における日経平均、NYダウ、米ドル/円の「5月~9月」と「10月~4月」の変動幅や平均利益などを調べ、それをまとめたものです。

セル・イン・メイアノマリー検証

 これを見ると、日経平均の5月~9月の平均変動幅は3075円と、10月~4月の平均変動幅の2043円よりも大きくなっています。また、米国の代表的な株価指数のNYダウも、5月~9月は2455ドル、10月~4月末は1632ドルと、平均変動幅は5月~9月のほうが大きくなっており、格言どおりの結果ではありません。

 おそらく、「セル・イン・メイ」は昔は有効なアノマリーだったけれど、時代が変わって近年では有効ではなくなっていると考えることができるのではないでしょうか。

 アノマリーには、市場参加者の間で有名になるほど、アノマリーどおりの動きになりにくいという性質があります。ほかにも、8月は円高になりやすいというアノマリーが有名ですが、近年はその傾向も確認できていません。

 また、先ほどの表を見ると、NYダウでは過去20年間における5月~9月の平均利益が1299ドルと、10月~4月の889ドルよりも大きくなっています。

 つまり、セル・イン・メイの格言は古いものとなり、5月に買って9月に売るのが有効な時代に移り変わって、「バイ・イン・メイ(Buy in May)」の新たな格言が生まれることになるかもしれません

 こうしたデータが、FXトレードの参考になれば幸いです。

 次回は6月のアノマリーを紹介しますので、お楽しみに!


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